【感染症エクスプレス@厚労省】Vol.470(2022年8月19日)
2022年7月21日、米国CDCは、ニューヨーク州保健局で1例がポリオに感染した事例を把握しており、調査をしていると報告しました。
患者はワクチン未接種でした。米国CDCの調査によれば、この症例はワクチン由来ポリオウイルス2型(VDPV2)であることがわかっています。
世界ポリオ根絶イニシアチブ(GPEI)は、本件から分離されたウイルスが、6月初旬にニューヨーク州とエルサレム、さらにロンドンで環境試料から最近検出されたウイルスにもゲノム情報的に関連しているとしています。
ウイルスの伝播と潜在的なリスクを明らかにし、公衆衛生対応に繋げるため、さらなる調査が進行中です。
なお、ニューヨーク州では86%程度(5歳まで)までポリオの初回接種を完了しています。
急性灰白髄炎(ポリオ)は、感染症法上2類感染症に指定される感染症で、診断した医師は届け出を直ちに行う必要があります。
我が国で最後に野生型(ワクチンによらない)によるポリオが届出・把握されたのは1980年です。日本では、不活化ワクチンによる定期接種を実施したり、2013年より環境水サーベイランスを開始し、
環境水中のポリオウイルスを監視したりするといった対策を行っています。
この疾患に対する特異的な治療法はありませんが、十分なワクチン接種によって予防することは可能です。
2022年現在、日本では、不活化ポリオワクチンの初回接種3回、追加接種1回、合計4回が、予防接種法で定める定期接種として行われています。
日本のポリオ予防接種実施率(令和元年)は、初回接種3回目は98.89%、追加接種は98.5%となっています。
ポリオは、一部の国で流行が見られますが、今回の事例のように、先進国で発生する可能性もある疾患です。大切なお子様をポリオから守るために、予防接種を受けましょう。
・米国疾病予防管理センター(CDC). Polio Elimination in the United States, 3 August, 2022,
https://www.cdc.gov/polio/what-is-polio/polio-us.html (2022/08/03)
・世界ポリオ検査室ネットワーク(GPLN). Updated statement on report of polio detection in United States, 29 July, 2022,
https://polioeradication.org/news-post/report-of-polio-detection-in-united-states/ (2022/08/15)
・ニューヨーク市保健精神衛生部(NYCDOHMH) NYSDOH and NYCDOHMH Wastewater Monitoring Identifies Polio in New York City and Urge Unvaccinated New Yorkers to Get Vaccinated Now,12 August, 2022,
https://www1.nyc.gov/site/doh/about/press/pr2022/nysdoh-and-nycdohm-wastewater-monitoring-finds-polio-urge-to-get-vaccinated.page (2022/08/12)
・厚生労働省 ポリオとポリオワクチンの基礎知識
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/qa.html (2022/08/15)
・国立感染症研究所 ポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)とは(IDWR 2001年第26号)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/386-polio-intro.html (2022/08/15)
・国立感染症研究所 ポリオ 2016年現在(IASR Vol.37 p.17-18: 2016年2月号)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/polio-m/polio-iasrtpc/6272-tpc432-j.html (2022/08/15)
・国立感染症研究所 日本の予防接種スケジュール
https://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/schedule/2022/JP20220801_03.pdf (2022/08/15)
・厚生労働省 定期の予防接種実施者数
https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html (2022/08/15)