『保健医療科学』 2023 第72巻 特別号 p.15-18(2023年8月)
特集 : 国立保健医療科学院 20周年を迎えて— <科学院の現在 : 設立20周年記念シンポジウム>
建築・施設管理研究領域の研究紹介
―医療施設のエアロゾル感染対策と中規模建築物の自主的管理手法の構築について―
本間義規
国立保健医療科学院統括研究官(建築・施設管理研究分野)
建築・施設管理研究領域の研究範囲
建築・施設管理研究領域は,建築空間の熱湿気・空気環境管理や建築設備のほか,微生物汚染・ペストコントロールなど,建築物衛生法に規定されている建築物環境衛生・施設管理に関する研究を行っている. また,医療施設や高齢者施設などハイリスク対象者が利用する施設や,児童福祉施設,学校,また住宅の健康影響を対象とした研究についても実施している.
建築・施設管理研究領域では,現在,5 人のメンバー で表 1 に示す基盤的研究,厚生労働科研や文部科学省科研,その他外部資金の研究を実施している. このうち, 特に感染症対策とIoT化対応は重要なテーマとして捉えており,その比重も大きくなってきている. 本報告では, COVID-19対応として取り組んでいる医療施設の空気感染に関する研究と, 政府のデジタル化方針と連動した建築物衛生管理のIoT化に関連する研究について,その概要と途中経過を簡単に紹介する.
表1 現在取り組んでいる建築・施設管理研究領域の研究19テーマ
国立保健医療科学院 基盤的研究
感染を抑制するための室内空気環境計画に関する研究 (R4)
厚生労働省科学研究費
中規模建築物所有者等による自主的な維持管理手法の検証のための研究 (R4-R6)
感染症対策を踏まえた建物内部の適切な清掃手法等の検証及び確立のための研究 (R3-R4)
IoTを活用した建築物衛生管理手法の検証のための研究 (R4-R5)
興行場における衛生的な環境確保のための研究 (R3-R5)
健康増進に向けた住宅環境整備のための研究 (R2-R4)
建築物環境衛生管理における空気調和設備等の適切な運用管理手法の研究 (R2-R4)
文部科学省科学研究費
小ボリューム住宅の湿害防止に資する躯体透気型換気システムの開発 (R2-R4)
住宅における機械換気の実質効果と健康リスク影響に関する調査 (R2-R5)
一時保護所の機能・役割と空間構成の検証及び建築設計マニュアルの作成 (R3-R5)
エンドトキシン測定による感染予防と微生物汚染対策に関する研究 (R2-R4)
高齢者の皮膚不感蒸泄量予測を目指した数値人体非定常応答モデルの開発 (R3-R5)
自然換気建物の設計法確立に向けた基礎的検討-開放率を用いた換気口面積の設定法- (R4-R6)
在宅生活ニーズの把握と多職種連携のための見取り図の活用効果の具体的検証 (R2-R4)
室内環境中のフタル酸エステル・2-エチル‐1‐ヘキサノールの動態分析/リスク評価 (R1-R4)
住宅室内における汚染粒子の発生から居住者への曝露の挙動解析と健康リスク評価 (R2-R4)
居住環境におけるナノ・マイクロプラスチック問題の調査・分析法の確立と実態調査 (R3-R6)
その他外部資金
床下空間に起因する微生物汚染リスク統合評価手法の構築 (R4-R5) 地域差を考慮できる新たな熱中症危険度の判定手法の提案 (R4)
地域差を考慮できる新たな熱中症危険度の判定手法の提案 (R4)