【感染症エクスプレス@厚労省】Vol.506(2024年2月9日)
皆さまは、海外では多剤耐性カンジダ・アウリス(Candida auris)によるアウトブレイク事例が多数報告されているのをご存じでしょうか。
カンジダ・アウリスは、2009年に本邦より初めて報告されたカンジダ属病原菌種であり、現在は世界各国で感染症例の発生があります。
本邦で報告されているのは主に抗真菌薬への感受性の高い非侵襲性のカンジダ・アウリスですが、インド・アフリカ・米国・欧州など多くの国では本邦とは異なる系統の多剤耐性株による侵襲性感染症となっています。
カンジダ・アウリスは薬剤耐性(AMR)対策の観点から非常に重要な真菌種であり、複数国の分離株の薬剤感受性を調べた研究では93%がフルコナゾール耐性であり、35%がアムホテリシンB耐性、41%が2系統以上の抗真菌薬に耐性があり、臨床現場で使える全ての抗真菌薬に耐性を示す報告もありました(1)。
カンジダ・アウリスは高い薬剤耐性に加えて、感染制御の困難さから、世界保健機関(WHO)は真菌優先病原体リストの1つとして位置づけています(2)。
昨年、国内初となる海外株による真菌血症による死亡例が報告されており、今後国内での事例の発生に注意が必要です。
カンジダ・アウリスによる感染症を疑った場合は、厚生労働省や国立感染症研究所等のホームページ等を活用しつつ、最寄りの保健所にご相談下さい。
・厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課
「 多剤耐性で重篤な感染症を引き起こす恐れのあるカンジダ・アウリス(Candida auris)について(情報提供及び依頼)」 ※
・国立感染症研究所 国内でよくみられる侵襲性真菌症~カンジダ症~ ※
・ 国立国際医療研究センター国際感染症センター「カンジダ・アウリス(Candida auris)診療の手引き 第1.0版」 ※
※今後の知見の集積に応じて、内容の改訂が行われる場合がありますので、常に最新の情報を得るようにして下さい。
参考文献
1.Lockhart S.R., et al. Simultaneous Emergence of Multidrug-Resistant Candida auris on 3 Continents Confirmed by Whole-Genome Sequencing and Epidemiological Analyses. Clin Infect Dis, 2017 ;64(2):134-140.
2.World Health Organization. WHO fungal priority pathogens list to guide research, development and public health action. (Accessed on 22th January)