[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性感染症
衛研名:静岡県環境衛生科学研究所
報告者:微生物部細菌班 小栁純子
事例終息:事例終息
事例発生日:2023/4
事例終息日:2023/5
発生地域:静岡県内
発生規模:
患者被害報告数:41
死亡者数:1
原因物質:Haemophilus influenzae 無莢膜型
キーワード:無莢膜型インフルエンザ菌 高齢者施設
概要:
令和5年5月17日に、保健所から「管内の高齢者施設において、発熱、咳、咽頭痛の有症状者が多数発生し、新型コロナウイルスは陰性だったが、入院患者5名からインフルエンザ菌が分離された」と連絡があった。保健所が患者の発生状況を調査したところ、初発有症者は施設職員2名で4月末に発症し、その後計39名(利用者35名、職員4名)が発症、利用者13名が入院、うち1名が死亡した。入院患者11名の鼻咽頭拭い液について静岡県環境衛生科学研究所で検査を行ったところ、ヒトメタニューモウイルスおよびRSウイルスは陰性であった。医療機関から提供された分離菌5株について検査を実施し、無莢膜型インフルエンザ菌であることを確認した。
背景:
無莢膜型インフルエンザ菌は成人の下気道感染症の原因として重要であるが、施設内での集団感染は比較的まれであるとされている。今回、無莢膜型インフルエンザ菌の集団感染事例が発生したので報告する。
地研の対応:
分離菌株について、侵襲性インフルエンザ菌感染症の病原体検出マニュアルに従ってインフルエンザ菌莢膜関連遺伝子(bexA、bexB)のPCR検査を行い、本菌が無莢膜型インフルエンザ菌であることを確認した。
行政の対応:
保健所は積極的疫学調査及び施設の感染対策に関する指導・助言を行うとともに、医療機関に対して検体提供を依頼した。当該施設での感染対策が確認できた。
原因究明:
感染症の原因究明およびまん延防止のため、当該施設における健康調査および疫学調査を実施したが原因は不明であった。入院患者11名から鼻咽頭拭い液を採取し、ヒトメタニューモウイルスおよびRSウイルスについて検査を行い、陰性であることを確認した。
診断:
なし
地研間の連携:
なし
国及び国研等との連携:
なし
事例の教訓・反省:
成人の上気道に保菌されている無莢膜型インフルエンザ菌は、慢性肺疾患の増悪や高齢者肺炎の原因となることを周知し、標準予防策による手指衛生の徹底が重要である。
現在の状況:
施設における感染対策が継続されている。
今後の課題:
特になし
問題点:
特になし
関連資料:
なし