No.23007 研修所の食堂で発生した腸管出血性大腸菌による食中毒ー船橋市

[ 詳細報告 ]

分野名:細菌性食中毒
衛研名:船橋市衛生試験所
報告者:検査係 佐藤順子
事例終息:事例終息
事例発生日:2022/6/24
事例終息日:2022/7/20
発生地域:千葉県船橋市
発生規模:
患者被害報告数:13
死亡者数:0
原因物質:腸管出血性大腸菌O121(VT2)
キーワード:腸管出血性大腸菌O121、食中毒、給食

概要:
 医療機関から「6月24日から26日にかけて食中毒を疑う症状を呈した患者3名を診察した。3名とも同じ研修所の寮に住んでいる。」旨の届出があり、この3名から腸管出血性大腸菌 O121(VT2)が検出された。寮生32名、調理従事者12名の検便及び寮の食堂で提供された給食の検食32検体の検査を行ったところ、寮生、調理従事者及び6月22日昼に提供された「水菜と胡瓜の塩昆布和え」の検食から腸管出血性大腸菌 O121(VT2)が検出された。これらのことから、本件は食中毒と断定された。

背景:
 腸管出血性大腸菌は、毒力の強いベロ毒素を出し、溶血性尿毒症症候群(HUS)等の合併症を引き起こすのが特徴である。腸管出血性大腸菌による食中毒事例については、国内では、焼肉店等の飲食店や、食肉販売業者が提供した食肉を、生や加熱不足で食べて感染する事例が多くなっているが、野菜が原因とされる感染例も報告されている。

地研の対応:
 喫食者便、原因施設の従事者便、原因施設の拭き取り、検食の細菌検査を行った。
 喫食者の検便は、6月9日以降に消化器症状を呈した寮生32名の検便を実施し、5名から病因物質が検出された。原因施設の従事者の検便は、従事者12名中2名から病因物質が検出された。原因施設の拭き取り検査(細菌)は、全て陰性だった。検食の検査は、検体数が多数に渡ったことから、6月17日から6月24日までの間で、医療機関から届出のあった患者3名中3名が喫食した検体(18検体)、及び同患者3名中1名以上が喫食したものであって原材料を加熱せずに殺菌し提供された検体(14検体)の計32検体について検査した。6月22日昼に提供された給食の検食「水菜と胡瓜の塩昆布和え」から病因物質が検出された。

行政の対応:
 営業停止3日間:7月18日から7月20日まで。食品衛生監視指導票を交付するとともに、衛生教育を実施し再発防止の指導を行った。また、7月18日にプレス発表を行い、腸管出血性大腸菌の予防方法等の注意喚起を行った。

原因究明:
 6月22日昼に提供された給食の検食「水菜と胡瓜の塩昆布和え」から病因物質が検出された。調理従業員2名の便からも病因物質が検出されたが、この者らは、6月23日~24日に定期の従業員検便を実施しており、これに基づく結果においては、腸管出血性大腸菌が検出されなかった。このことから、病因物質の汚染は、従業員由来である可能性が否定され、原材料由来である可能性が示唆された。さらに、水菜及び胡瓜の流通経路の遡り調査にも着手したが、他の流通先における同様苦情は認められず、汚染の原因を特定するには至らなかった。

診断:
 腸管出血性大腸菌O121(VT2)

地研間の連携:
 該当事項なし

国及び国研等との連携:
 該当事項なし

事例の教訓・反省:
 使用された原材料の内、水菜及び胡瓜はいずれも生鮮食品であり、調理工程には、洗浄及び殺菌工程が認められたが、これらの工程が徹底されていなかったことにより、病因物質が生残したと考えられる。

現在の状況:
 (記述事項なし)

今後の課題:
 (記述事項なし)

問題点:
(事例の教訓・反省と重複するため、記述事項なし)

関連資料:
 (記述事項なし)

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