保健医療科学 高齢者介護の質向上にむけた動向:切れ目のない支援を ―アクティブ・エイジングとウェルビーイング― (2024年8月)

『保健医療科学』 2024 第73巻 第3号 p.173(2024年8月)
特集 : 高齢者介護の質向上にむけた動向:切れ目のない支援を ―アクティブ・エイジングとウェルビーイング―
 

<巻頭言>

高齢者介護の質向上にむけた動向:切れ目のない支援を ―アクティブ・エイジングとウェルビーイング―

児玉知子
国立保健医療科学院公衆衛生政策研究部上席主任研究官

Towards Quality Care for older people with seamless support : Active ageing and Well-being

KODAMA Tomoko
Chief Senior Researcher, Department of Public Health Policy, National Institute of Public Health

<巻頭言>
 人口高齢化は世界が直面している課題であるが,特にアジア太平洋地域では変化のペースが速く,65歳以上人口割合は,2050年には現在の約2.5倍に増加し,女性の14%,男性の11%に達すると推定されている.高齢者の増加に伴い,介護サービス(Long-term care services,以下LTC)へのアクセス拡大,公的LTC導入や整備,継続的な提供は,国際的な共通課題となっている.
 一方,LTCは社会保障を含めた国の施策や経済・社会・文化的背景にも依存しており,在宅を含めた複数サービスの利用やインフォーマルケアの存在,長期療養者のアウトカム評価に関する課題,アクセスや個別支援,意思決定のあり方,他のサービスとの統合など,その評価には考慮すべき点が多い.
 本特集号では,国際的な動向を視野に入れつつ,今後高齢化が進行するアジアや,経済発展が著しいASEAN(東南アジア諸国連合)にも注目し議論が進められている.人口統計をベースにした医療・介護制度の現状や政策課題,WHOが取り組む高齢者のための包括的ケア(ICOPE:Integrated Care for Older People)や,介護予防の観点も含めたHealthy Ageing の取組み, LTCリソースやサービスの質評価に関する記述は,世界における日本の立ち位置についても示唆を与えるものと期待する.また,国際的に注目が高まっている歯・口腔の介護予防アセスメントやリハビリテーションに関する現状など,高齢者の健康を取り巻く幅広い視点から議論が進められている.さらに,日本の介護現場におけるテクノロジーの導入活用支援の取組みや開発に関する報告と合わせて,介護サービス支援機器活用の科学技術政策と高齢者政策について,高齢社会の実現像や個々人の高齢期の生き方についても言及いただいた.
 本特集号が,高齢社会において課題解決に取り組んでおられる自治体職員や介護関連部署の皆様,また読者の皆様方にとって,地域における高齢者介護の質の向上に向けた活動に資することを期待し,誰ひとり取り残さない社会への活動の一助としていただければ幸いである.

高齢者介護の質向上にむけた動向:切れ目のない支援を ―アクティブ・エイジングとウェルビーイング―

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