No.24006 スイセン様植物による食中毒(2024、群馬県、ガランタミン)ー群馬県

[ 詳細報告 ]

分野名:自然毒等による食中毒
衛研名:群馬県衛生環境研究所、前橋市保健所、群馬県食品安全検査センター
報告者:
事例終息:事例終息
事例発生日:2024/04/08
事例終息日:2024/04/10
発生地域:群馬県前橋市
発生規模:
患者被害報告数:2名(入院2名)
死亡者数:0名
原因物質:ガランタミン
キーワード:スイセン 植物性自然毒 アルカロイド ガランタミン

概要:
 2024年4月8日(月)14時30分頃、市内医療機関から、「自宅の庭から採取した植物を自ら調理し喫食したところ、嘔吐を呈した患者が受診し、現在入院している。患者への聴き取りから、採取した植物をニラと思って調理したが、スイセンだったかもしれない、との発言があったため、食中毒を疑って通報した。」旨の電話連絡が前橋市保健所にあった。
 同保健所で調査したところ、患者は4月8日(月)の朝7時頃、自宅の庭に生えていた植物をニラと思って調理し、同日8時頃、朝食の一部として喫食していたことが判明した。前橋市保健所及び群馬県食品安全検査センター(県の食品検査部門)が連携し、喫食した調理品の残品を検査したところ、有毒成分が検出され、残品に有毒植物のスイセンが含まれていたと推定された。
 患者の症状がスイセンの中毒症状に合致していたこと、喫食した調理品の残品からスイセンに含有する有毒成分が検出されたこと及び患者を診察した医師から食中毒届が提出されたことから、有毒植物のスイセンを原因とする食中毒事件と断定された。

背景:
 毎年、特に春先から初夏にかけて、有毒植物を食用の植物と誤って喫食したことによる食中毒が多く発生しており、全国的にもスイセン等を誤食したことによる食中毒事例が複数例報告されている。前橋市においても、2021年4月に有毒植物のバイケイソウをオオバギボウシと誤って認識し喫食したことによる食中毒や、2023年4月に誤ってスイセンを喫食したことによる食中毒が発生している。

地研の対応:
 

行政の対応:
  前橋市保健所は、有毒植物のスイセンを原因とする食中毒事件と断定した4月10日(水)に、スイセンの誤食による食中毒事件として速やかに事件概要を公表し、市民に対し有毒植物の誤食による食中毒予防の注意喚起を行った。

原因究明:
 前橋市保健所は、患者から入手した「喫食残品(調理後)」について、抽出液を作成し、分析に関しては、スイセン様植物の有毒成分とされ、標準品が入手可能で誤食事案対応のための分析法が整備済みであったリコリン及びガランタミンについて、群馬県食品安全検査センターがおこなった。

診断:
 群馬県食品安全検査センターでのLC/MS/MSによる測定で、「喫食残品(調理後)」からガランタミンが2.4µg/g検出された。リコリンは検出されなかった。同検体からスイセンの有毒成分であるガランタミンが検出されたため、残品に有毒植物のスイセンが含まれていたと推定された

地研間の連携:
 

国及び国研等との連携:
 

事例の教訓・反省:
 今回は、昨年度に経験した同様の事案から、前橋市保健所と群馬県食品安全検査センターの役割分担を明確にでき、迅速に検査結果を出すことができた。
 有毒植物の誤食事案に迅速に対応するには、県内の中核市との連携として、事前に、分析可能な植物や標準品の整備状況等の情報を共有し、役割分担等を検討しておくことが重要であると感じた。

現在の状況:
 

今後の課題:
 有毒植物による食中毒は全国において毎年発生しており、原因究明における成分分析の役割は重要であるため、事案発生時、様々な成分について分析できるよう、限られた予算の中で、標準品及び有毒植物の分析法を整備しておくことが、課題である。

問題点:

関連資料:
 

ページの先頭へ戻る