No.24009 腸管病原性大腸菌による集団食中毒ー兵庫県

[ 詳細報告 ]

分野名:細菌性食中毒
衛研名:兵庫県立健康科学研究所
報告者:感染症部 齋藤悦子
事例終息:事例終息
事例発生日:2022/06/11
事例終息日:2022/06/17
発生地域:兵庫県養父市他
発生規模:喫食者251名
患者被害報告数:171名
死亡者数:0名
原因物質:腸管病原性大腸菌O45:H15
キーワード:腸管病原性大腸菌、集団食中毒

概要:
 2022年6月12日、「県外の学校の生徒複数名が腹痛、下痢等の症状を訴え、7名が救急搬送された」旨の連絡があった。健康福祉事務所(保健所)の調査の結果、飲食店Aが調製した弁当を喫食した10グループ171名が食中毒症状を呈していることが分かった。有症者44名、施設従業員2名、食品残品1検体より腸管病原性大腸菌(EPEC)が検出され、本事例は食中毒と断定された。

背景:
 EPECは途上国では乳幼児胃腸炎の重要な原因菌とされており、国内では乳幼児から散発的に分離される他、食中毒事例の原因菌となるが発生は稀である。今回の事例は多数の患者が発生し、食品残品からPFGEパターンが一致するEPECが検出され、食中毒事例と断定された。

地研の対応:
 施設従業員10名、有症者24名、食品残品1検体からEPEC O45が検出され、分離菌株についてPFGE解析を行った。

行政の対応:
 管轄保健所は疫学調査及び当該施設への立ち入り調査を行い、令和4年6月15日から17日まで営業停止処分を行った。

原因究明:
 施設従業員10名、有症者74名の糞便、調理場内10か所のふき取り検体及び食品残品6検体の検査を実施した。本事例では有症者の多くが他府県に居住しており、検査は兵庫県を含む各自治体で実施された。兵庫県では食中毒細菌の検査は保健所検査室で実施しており、下痢原性大腸菌検査は市販の免疫血清を用いた血清型別による方法で行われている。当初、病因物質と考えられる食中毒細菌は陰性とされていたが、大阪府の有症者からeae遺伝子を保有するEPEC O45が検出されたことが判明し、兵庫県立健康科学研究所で検査を実施した。血清型O45は市販の血清セットには含まれておらず、血清型別試験はE coli O-genotyping PCRで行った。その結果、施設従業員2名、有症者21名、食品残品「ほうれん草の白和え」1検体から当該菌を検出した。これらはbfpA遺伝子陰性のatypical EPECであり、E coli H-genotyping PCRの結果、全てHg:15であった。また、PFGE解析の結果、これらの菌株はほぼ同一のパターンを示した。これらの結果及び疫学調査の結果から、今回の事例はEPEC O45に汚染された「ほうれん草の白和え」を原因とする食中毒事例と断定された。EPEC O45が検出された従業員2名のうち1名は調理作業に従事しておらず、もう1名は検体採取前に原因食品である「ほうれん草の白和え」を喫食しており、以前からの保菌か原因食品の喫食による感染か不明であった。

診断:
 

地研間の連携:
 有症者から分離された大腸菌O45の病原遺伝子保有状況(eae遺伝子単独保有)について、大阪健康安全基盤研究所から情報提供を受け、施設従業員、管内の有症者及び食品の検査を実施した。

国及び国研等との連携:
 

事例の教訓・反省:
 

現在の状況:
 

今後の課題:
 上述したように兵庫県では食中毒事例における下痢原性大腸菌の検査を、培養法で分離した大腸菌の血清型別による方法で実施しているが、この方法では本事例のように市販の血清セットに含まれていない血清型の大腸菌は陰性と判定される。保健所検査室でのコロニースイープPCR法の導入や兵庫県立健康科学研究所との速やかな連携等、下痢原性大腸菌の検査体制について改善が必要と考えられる。

問題点:
 

関連資料:
 令和4年度地方衛生研究所全国協議会近畿支部細菌部会研究会資料

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