No.25014  ハンバーグレストランで発生した腸管出血性大腸菌による食中毒ー千葉県

[ 詳細報告 ]

分野名:細菌性食中毒
衛研名:船橋市衛生試験所
報告者:健康危機対策課 佐藤順子
事例終息:事例終息
事例発生日:2024年8月25日
事例終息日:2024年9月25日
発生地域:千葉県船橋市
発生規模:
患者被害報告数:52名
死亡者数:0名
原因物質:腸管出血性大腸菌O157(VT1VT2)
キーワード:腸管出血性大腸菌O157、食中毒、ハンバーグ

概要:
 医療機関より、「市内ハンバーグレストランを利用した体調不良の客から腸管出血性大腸菌O157が検出された」との届出があった。これをもとに調査を行ったところ、当該店舗ではハンバーグを加熱不十分の状態で提供しており、同メニューを喫食した複数名の患者便、および当該店舗の系列工場での保管検体(成形済み未加熱のハンバーグ)から腸管出血性大腸菌O157(VT1VT2)が検出された。これらのことから本件は食中毒と断定された。

背景:
 腸管出血性大腸菌は、毒力の強いベロ毒素を出し、溶血性尿毒症症候群(HUS)等の合併症を引き起こすのが特徴である。腸管出血性大腸菌による食中毒事例については、国内では、焼肉店等の飲食店や、食肉販売業者が提供した食肉を、生や加熱不足で喫食し感染する事例が多くなっている。

地研の対応:
 喫食者便、原因施設の拭き取り、食品残品の細菌検査を行った。喫食者の検便は、8月25日以降に消化器症状を呈した45名に対して実施し、21名から病因物質である腸管出血性大腸菌O157が検出された。原因施設の拭き取り検査(細菌)は、全て陰性だった。検食の検査は、原因施設に保管されていた加熱調理済みハンバーグ及び成形済み未加熱のハンバーグ、系列工場に保管されていた成形済み未加熱のハンバーグ(8月24日、26日、27日製造)の計5検体に対し実施した。その結果、1検体(系列工場に保管されていた成形済み未加熱のハンバーグ(8月24日製造))から病因物質が検出された。また、この病因物質のMLVAtypeは、症例21検体のうち15検体と一致し、MLVAtypeの異なる検体6検体中2検体については、MLVAcomplexが一致した。

行政の対応:
 営業停止は9月6日から9月8日までの3日間とした。食品衛生監視指導票を交付するとともに、衛生教育を実施し再発防止の指導を行った。また、病因物質の特性から、食中毒患者を起因とするヒト-ヒト感染の拡大が懸念されたことから、食中毒の断定に伴う不利益処分に係るプレスリリース(9月6日)以外に、感染拡大防止を目的とした別のプレスリリース(9月11日)を行うことで注意喚起を促した。

原因究明:
 系列工場に保管されていた成形済み未加熱のハンバーグ(8月24日製造)から病因物質が検出されたため、製造時点で既に原因物質に汚染されていたものと考えられた。ハンバーグは中心温度75℃を満たさない状態で提供され、客席で最終加熱工程を完了させる必要があったが、提供時のマニュアルでは「3分後にお召し上がりください」と案内すべきところ、「温めてお召し上がりください」との案内に留まり、また客にとっては一見して中心部まで加熱されたものと誤解される状態での提供であったこと等から、加熱不十分の状態で喫食された恐れがあった。8月24日製造のハンバーグは8月24日から29日にかけて提供され、同期間の利用客による発症が集中していた。これらのことから、原因食品を「成形済み未加熱のハンバーグ(8月24日製造)を使用したハンバーグ」と特定した。
また、発症者の共通喫食物が当該飲食店での食事に限られたこと、発症者の便から腸管出血性大腸菌O157が検出されたこと、発症者の症状が腸管出血性大腸菌による症状と一致したことから、病因物質を腸管出血性大腸菌O157と特定した。

診断:
 腸管出血性大腸菌O157(VT1VT2)

地研間の連携:
 腸管出血性大腸菌O157陽性と判明した検体について、千葉県衛生研究所へMLVAtypeの解析を依頼した。

国及び国研等との連携:
 該当事項なし

事例の教訓・反省:
 当該ハンバーグのメニューには「飲める」旨が冠され、保健所内で調査情報を共有する際にあっても、当該メニューを初見とする者には、加熱されていないハンバーグを想像する者も少なくなかった。このことから、当該メニューに惹かれて来店する者の中には、食肉類を加熱不十分な状態で喫食することを好む者が含まれると考える。事業者の建前としては「十分に加熱する」であったが、実際にはそういった嗜好性を持つ客へ訴求する意識が根底にあったと考えられ、マニュアルを逸脱したオペレーションを生んだとも考えられる。したがって定期監視においては、メニューにも意識を向ける必要がある。食品衛生監視員ならば「畜肉」と「刺し」が組み合わさったメニューには敏感に反応できるだろうが、調理工程を想定すると相反するようなものや、提供される様態がおよそ想像できないようなものについても、一歩踏み込んで食品等事業者に問いかける必要があると考えられる。また食品等事業者にとっては、メニューや、ともすると屋号ですら消費者の興味を惹くツールであるため、話題性をさらうような、特に新たに食品営業を開始した施設にはとりわけ注意し、許認可担当と監視担当で連携の上、早期に定期監視する必要もあると考えられる。

現在の状況:
 (記述事項なし)

今後の課題:
 原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられたことから、定期監視においてはマニュアルやこれに基づく記録を確認することが日常的となった。しかしながら、それらが「適正に備えられている」ことに満足するのではなく、「適正に実行できているか」という疑いの目線を常に持ち、一歩踏み込んだ問いかけを食品等事業者へ行うことが必要と考えられる。

問題点:
 (事例の教訓に含まれるため、記載事項なし)

関連資料:
(記述事項なし)
 

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