[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
衛研名:宮城県保健環境センター
報告者:生活化学部 佐藤由美
事例終息:事例終息
事例発生日:2024/07/23
事例終息日:2024/07/24
発生地域:宮城県気仙沼市
発生規模:家庭内(喫食者3名)
患者被害報告数:3名
死亡者数:0名
原因物質:ククルビタシン類
キーワード:苦みのあるユウガオ、ククルビタシンB、LC-QTOF/MS
概要:
2024年7月23日午後5時頃、宮城県気仙沼市内の医療機関から管轄保健所に「苦みのあるユウガオを喫食し、腹痛、下痢等の症状を呈した患者1名を診療した。」との通報があった。 保健所が調査したところ、7月20日に販売店からユウガオを購入し、7月22日の夕食に調理して喫食した3名(男性1名、女性2名)のうち3名が腹痛、下痢等の症状を呈し、うち喫食量の多かった1名は悪寒、嘔吐の症状も呈して、医療機関を受診していたことが判明した。患者症状がユウガオの苦み成分(ククルビタシン類)による症状と一致していたことから、調理前のユウガオ残品が検体として搬入された。
背景:
ユウガオはウリ科植物特有の苦み成分ククルビタシン類を含んでいる。ククルビタシン類を多量に含有する個体を摂食すると、腹痛、下痢、嘔吐などの症状を呈することが報告されており、厚生労働省の食中毒統計によると2000年から2023年の間に、国内で5件の食中毒事例が発生している。本事例は統計上、宮城県で初めて発生した事例である。
地研の対応:
保健所の依頼により、患者から提供された調理前ユウガオ残品について、7月25日にククルビタシン類の定性及び定量検査を実施した。
行政の対応:
保健所は、患者の症状及び発症までの時間がユウガオに含まれるククルビタシン類による食中毒とほぼ一致したこと、診察した医師から食中毒患者等届出票が提出されたことから、7月24日にユウガオの炒め物が原因食品と推定される食中毒と断定し、県環境生活部食と暮らしの安全推進課が記者発表を行った。
また、保健所は食中毒の原因となったユウガオを販売した店舗や生産者に対し、販売に際して苦みが強い場合は喫食しないよう注意喚起する表示を掲示するよう指示を行った。
原因究明:
搬入された調理前ユウガオ残品を3分割し、それぞれ皮を剥き、種子を除去して均質化試料とし、ククルビタシン類の定性及び定量検査を実施した。
定性検査は、LC-QTOF/MSのSCAN分析でNISTマススペクトルライブラリー2017より選択したククルビタシンB、D、E、I及びEの配糖体のプロトン付加体、アンモニウム付加体について、精密質量におけるピークの有無を判定した。定量検査は標準品が入手できたククルビタシンBについてのみ絶対検量線法により実施した。
診断(定性・定量):
定量検査の結果、分割した3つの部位すべてからククルビタシンB が130~310μg/g検出された。定性検査ではククルビタシンB以外に存在を推定できるピークは確認できなかった。
地研間の連携:
兵庫県立健康科学研究所吉岡氏に連絡を取り、分析法についての助言を受けた。
国及び国研等との連携:
国立医薬品食品衛生研究所安全情報部登田部長に連絡を取り、分析経験の豊富な吉岡氏を紹介していただいた。
事例の教訓・反省:
現在の状況(技術、体制、設備等):
今後の課題:
本事例は、統計上宮城県初のククルビタシン類による食中毒事例であったが、国立医薬品食品衛生研究所や兵庫県立健康科学研究所等、他の検査機関からの助言により、速やかに対応することができた。発生事例が多くない自然毒による食中毒事例については、分析経験が乏しい場合や標準品の常備・入手が難しい場合における国、地研間の協力が重要と考える。
問題点:
関連資料:
・吉岡直樹ら(2017):兵庫県立健康生活化学研究所健康科学研究センター研究報告第8号、26-29p
・吉岡直樹ら(2018):兵庫県立健康生活化学研究所健康科学研究センター研究報告第9号、11-17p
