[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
衛研名:神奈川県衛生研究所
報告者:理化学部 脇ますみ
事例終息:事例終息
事例発生日:2025年4月9日
事例終息日:2025年4月14日
発生地域:神奈川県鎌倉保健福祉事務所管内
発生規模:家庭、喫食者1名
患者被害報告数:1名
死亡者数:0名
原因物質:アコニチン系アルカロイド
キーワード:トリカブト、植物性自然毒、アコニチン系アルカロイド
概要:
2025年4月9日(水)、鎌倉保健福祉事務所あて医療機関から「有毒植物による中毒を疑う症状を呈した患者を診察した。」旨の連絡があった。同保健福祉事務所で調査を行ったところ、患者が自身でニリンソウと認識し採取した野草をおひたしにして食べたことが判明した。4月8日(火)21時ごろにおひたしを食べ、翌日0時30分ごろに口のしびれから始まり、手、足へとしびれが広がり救急搬送され、4月10日(木)午後に退院した。患者はニリンソウに類似する野草としてトリカブトがあると認識しており、鑑別方法についても承知していたが、採取時に野草1本ずつの鑑別は行わなかった。
未調理の植物の残品はなく、形態鑑別はできなかった。調理残品について4月10日(木)に神奈川県衛生研究所に搬入され、検査したところ、アコニチンが6.1 µg/g、メサコニチンが10.9 µg/g、ヒパコニチンが1.5 µg/g検出された。本件について、同保健福祉事務所は、4月14日(月)にトリカブトを原因とする食中毒と決定した。
背景:
植物性自然毒による食中毒は全国で毎年発生しており、死亡事例も報告されている。特に今回のような家庭内における事例が多い。トリカブトについては、芽生え期の葉と酷似しているニリンソウやモミジガサなどの食用野草と間違って喫食される事例が多い。
地研の対応:
同保健福祉事務所からの依頼により、調理残品(おひたし)についてアコニチン系アルカロイドの検査を実施した。
行政の対応:
食べた野草の特徴を患者に確認したところ、トリカブトに類似していたこと、患者の症状がトリカブトの中毒症状と一致していること、患者が食べた野草の調理品からトリカブトの毒性成分と同じアコニチン系アルカロイドが検出されたこと、患者を診察した医師から食中毒の届出があったことから、同保健福祉事務所は4月14日(月)にトリカブトを原因とする食中毒と決定し、同日、注意喚起のため記者発表を行った。
原因究明:
患者本人が秋田県内でニリンソウと思われる野草が群生しているのを見つけた。本人はニリンソウに類似する野草としてトリカブトがあると認識しており、鑑別方法についても承知していたが、白い蕾などニリンソウの特徴を示す野草があったことから、採取時に野草1本ずつの鑑別は行わなかった。採取した野草の未調理残品はなかったため、形態鑑別はできなかった。調理残品(おひたし)について有毒成分を検査したところ、アコニチン系アルカロイドが検出された。
診断:
LC-MS/MSによる植物性自然毒39種の一斉分析法を用いて調理残品を検査したところ、アコニチンが6.1 µg/g、メサコニチンが10.9 µg/g、ヒパコニチンが1.5 µg/g検出された。
地研間の連携:
特になし
国及び国研等との連携:
特になし
事例の教訓・反省:
植物性自然毒による健康危機事例における有毒成分の分析は、今回のように形態鑑別が困難な場合であっても喫食植物の推定など原因究明に貢献できる可能性があるため、非常に有用である。
現在の状況:
LC-MS/MSによる植物性自然毒一斉分析法を整備している。
今後の課題:
より広範囲の健康危機事例への対応のため、有毒成分及び対象試料を拡大していく必要がある。
問題点:
標準物質が高額となる有毒成分が多い。
今後、医療機関などから生体試料(血清、尿など)の分析依頼があった場合、技術的に分析可能であっても受入体制が整っていない。
関連資料:
自然毒のリスクプロファイル(厚生労働省)
