No.25011  原因不明の集団発熱事例ー神奈川県

[ 詳細報告 ]

分野名:ウイルス性感染症
衛研名:神奈川県衛生研究所
報告者:微生物部 大屋日登美
事例終息:事例終息
事例発生日:2025年 7月X日
事例終息日:2025年 7月X+16日
発生地域:神奈川県内
発生規模:
患者被害報告数:24名
死亡者数:0名
原因物質:RSウイルスサブグループB(以下、RSV-B)
キーワード:RSV-B 高齢者施設 集団感染事例 発熱 呼吸器症状 ウイルス検査

概要:
 令和7年7月X日に、県域内の保健福祉事務所から「管内の高齢者施設において、発熱患者が24名発生し、施設での新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス抗原検査では全員陰性であった。」と連絡があった。保健福祉事務所が令和7年7月X日に患者の発生状況を調査したところ、初発有症者は施設入居者2名で令和7年7月X-4日に発症が確認され、37.0度以上の発熱を呈した者は、24名(入居者21名、職員3名)、そのうち入居者8名が入院した。入院患者のうち2名はRSウイルス感染症以外の疾患による入院であった。保健所の病原体検索依頼により7月X+6日に施設入居者のうち発熱が継続している患者6名(男性2名、女性4名)の咽頭ぬぐい液検体について神奈川県衛生研究所でPCR法を用いてウイルス検査を行ったところ、5名の検体からRSV-Bが検出された。インフルエンザウイルス(A型,B型)、パラインフルエンザウイルス(1型,2型,3型)、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、ライノウイルス、SARS-CoV-2は全て陰性であった。その後は、新規患者発生がなくX+16日に終息となった。 

背景:
 高齢者施設で原因不明の集団発熱事例が発生し、その原因究明のため当所でウイルス検査を実施し、RSV-Bを検出したので報告する。

地研の対応:
 施設入居者6名の検体(咽頭ぬぐい液)についてウイルス検査を実施した。ウイルス検査は、リアルタイムPCRでインフルエンザウイルス(A型,B型)、RSV-A,B、パラインフルエンザウイルス(1型,2型,3型)、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、ライノウイルス、SARS-CoV-2を実施したところ、6名中5名(含入院患者1名)の検体からRSV-Bが検出され、他のウイルスは全て陰性であった。

行政の対応:
高齢者施設からの報告にもとづき、管轄の保健福祉事務所がすみやかに施設に対して疫学調査や感染対策指導を実施した。感染対策実施後も感染拡大がみられたため、衛生研究所に原因病原体探索のための検査が依頼された。その後は、感染対策を継続することにより、終息した。

原因究明:
 保健福祉事務所が、衛生研究所の検査結果からRSV-Bによる集団発熱事例と判断した。

診断:
 医療機関における検査で、入院患者8名のうち1名からパラインフルエンザウイルスが検出。入院患者8名のうち衛生研究所で検査を実施した1名からRSV-B検出。

地研間の連携:
 なし

国及び国研等との連携:
 病原微生物検出情報(IASR)に投稿中。
 

事例の教訓・反省:
 RSウイルス感染症は、乳幼児期に多い感染症として知られているが、管内で流行が始まる前の夏季に、高齢者施設の集団感染事例がみられた。そのため、特に高齢者施設においても、RSウイルス感染症を念頭においた感染対策の実施やRSウイルスワクチンの接種を検討していくことが必要である。

現在の状況:
原因不明の感染症集団発生事例に対応するため、網羅的なウイルス感染症用および網羅的な細菌感染症用リアルタイム検査試薬を常備している。

今後の課題:
 市販の感染症用リアルタイム試薬は、ウイルス検査用、細菌検査用ともに1キットで実施可能な検体数に限りがあるため、緊急検査として原因不明感染症に対応するには試薬を常備しておく予算が必要である。今後は、原因不明疾患の病原体検索のために次世代シークエンサーを活用した網羅的病原体検索についても検討が必要である。

問題点:
 

関連資料:
・本事例:
1)Payne AB, et al, Respiratory syncytial virus (RSV) vaccine effectiveness against RSV-associated hospitalisations and emergency department encounters among adults aged 60 years and older in the USA, October, 2023, to March, 2024: a test-negative design analysis. Lancet.404(10462):1547-1559, 2024.
・神奈川県における高齢者施設の肺炎球菌感染症集団発生事例に関する文献:    
2)Kuroki T, Ishida M, Suzuki M, Furukawa I, Ohya H, Watanabe Y, Konnai M, Aihara Y, Chang B, Ariyoshi K, Oishi K, Ohnishi M, Morimoto K, Outbreak of Streptococcus pneumoniae serotype 3 pneumonia in extremely elderly people in a nursing home unit in Kanagawa, Japan, 2013.
J Am Geriatr Soc. 2014 Jun;62(6):1197-8. doi:10.1111/jgs.12863.PMID: 24925560
 

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