[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
衛研名:群馬県衛生環境研究所
報告者:研究企画係 佐藤 ゆり恵
事例終息:事例終息
事例発生日:2024/08/13
事例終息日:2024/08/23
発生地域:群馬県桐生市
発生規模:
患者被害報告数:42名
死亡者数:0名
原因物質:黄色ブドウ球菌
キーワード:黄色ブドウ球菌、菓子製造施設、従事者
概要:
2024年8月13日に県内の医療機関から、「2家族が腹痛、下痢、嘔吐の症状で受診し、病院へ搬送された」と保健所に通報があった。保健所の調査の結果、県内菓子製造施設A(以下、A施設)が製造したあんこのおはぎ(以下、おはぎ)を喫食した24グループ、42人が下痢や嘔吐、吐気、発熱、腹痛等の症状を呈していたことが判明した。有症者の共通食はA施設で製造されたおはぎのみであること、潜伏期間は0.5~19時間(平均4.8時間)であり、潜伏期間別の患者発生数は一峰性であったことから、共通食の単一暴露による食中毒が疑われた。当研究所の検査の結果、患者便及びふき取り検体(木製へら及び釜の取手)から黄色ブドウ球菌が分離された。分離された菌株は、POT法(PCR-based ORF Typing)により同一由来であることが示唆された。本事例では、残念ながら食品の収去及び、施設調査時に従事者の手指からのふき取りができなかった。今後、簡便なPOT法の他、次世代シークエンサーによる解析も実施できるよう検査方法の整備が課題である。
背景:
黄色ブドウ球菌食中毒は、黄色ブドウ球菌が食品中で増殖する際に産生するエンテロトキシンを食品と一緒に摂取することで発症する毒素型の食中毒である。黄色ブドウ球菌は、健常人の鼻腔や咽頭、腸管等にも生息している一方、手指等の傷に感染して化膿巣を形成する。そのため、調理従事者の手指を介して食品が汚染され、食中毒を引き起こすことが知られている。
地研の対応:
患者便3検体、従事者便3検体(製造担当者)、施設のふき取り5検体について検査を実施した。患者及びふき取り検体から検出された黄色ブドウ球菌の型別は、POT法により行った。
行政の対応:
食品衛生法第60条に基づく3日間の営業停止処分(2024年8月21日から23日)及びその他食品衛生対策等について指導した。
原因究明:
患者便3検体中2検体から黄色ブドウ球菌(毒素産生)を検出し、従事者便3検体(製造担当者)においてはウイルス、細菌は検出されなかった。一方、施設ふき取り5検体中2検体(木製へらの把手、あんこ釜の取手)から黄色ブドウ球菌(毒素産生)を検出した。分離された菌株は、POT法により同一由来であることが示唆された。
診断(定性・定量):
記述事項無し
地研間の連携:
無し
国及び国研等との連携:
無し
事例の教訓・反省:
おはぎの1ロットあたりの製造数は、約80個ほどであった。当初の製造作業は従事者1名で作業を行ったことにより製造に時間を要したため、高温多湿の環境に長く保管されていたことが推察できる。更に、初期ロットを製造した従事者は腕に傷を有しており、衛生手袋を着用していたものの使用方法が適切であったかは不明であり、衛生管理が十分にされず汚染が拡大したことは否定できない。保健所の調査でも、腕の傷は確認できたが、手指のふき取り検体を採取していなかったため感染原因の推定が困難になってしまった。
一方、施設のふき取り検体を採取し、菌を分離したことでPOT法による解析が可能となり菌株が同一由来であることを推定できた。
現在の状況(技術、体制、設備等):
POT法は、PFGE(Pulsed-field gel electrophoresis)に近い感度を有しているため、必要に応じてPOT法キットの所内在庫を保有している。
今後の課題:
PFGEに代わる方法として、POT法のような簡便な方法が実施できれば良いが、次世代シークエンサーによる解析が有効になることもあるため検査方法、解析方法の整備が課題である。
問題点:
(記述事項無し)
関連資料:
無し
