[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性感染症
衛研名:秋田県健康環境センター
報告者:保健衛生部 細菌チーム 関谷 優晟
事例終息:事例終息
事例発生日:2024年12月
事例終息日:2024年12月
発生地域:秋田県
発生規模:感染者数1名
患者被害報告数:1名
死亡者数:1名
原因物質:Corynebacterium ulcerans
キーワード:Corynebacterium ulcerans、死亡事例、ジフテリア毒素、rpoB、Elek法
概要:
患者は70代女性で、2024年12月某日救急搬送され入院となった。入院時に採取された皮膚病巣と血液培養2セットからグラム陽性桿菌が確認され、質量分析、16S rRNA遺伝子及びrpoB遺伝子の相同性解析による菌種同定、ジフテリア毒素についてPCR法による遺伝子検出及びElek法による毒素産生性試験を実施した結果、分離株はジフテリア毒素産生性のCorynebacterium ulceransであることが判明した。抗菌薬投与による治療が開始されていたが、入院2日後に死亡した。
背景:
C. ulceransは、ジフテリアの起因菌であるC. diphtheriaeの近縁種である。一部の菌株はジフテリア毒素を産生し、ジフテリアに類似した疾患を引き起こすことがある。ジフテリアが感染症法上における二類感染症として届出が義務付けられている一方で、C. ulcerans感染症は届出の対象外である。日本国内においては、2001年に初めて発生が確認されて以降、2020年までに36件が報告され、死亡事例は2件確認されている。
地研の対応:
医療機関から管轄保健所を通して菌株の精査依頼があり、相同性解析による菌種同定、ジフテリア毒素遺伝子検出及びジフテリア毒素確認試験を実施した。
行政の対応:
2002年11月に発出された厚生労働省健康局結核感染症課長通知に基づき、管轄保健所から厚生労働省に対して情報提供等が行われた。
原因究明:
過去の報告によると、C. ulcerans感染症のほぼ全ての症例で患者と動物との関与が確認されているが、本事例の患者は独居で交流のある親族もいなかったため、動物の飼育歴等を確認することはできず、原因究明には至らなかった。
診断:
16S rRNA遺伝子及びrpoB遺伝子の相同性解析を行った結果、両遺伝子ともC. ulceransの登録配列と100%一致した。PCR法によりジフテリア毒素遺伝子の保有を、Elek法によりジフテリア毒素産生性をそれぞれ確認したところ、いずれも陽性となった。
地研間の連携:
なし
国及び国研等との連携:
国立感染症研究所へ菌株を分与した。
事例の教訓・反省:
なし
現在の状況:
ジフテリア毒素遺伝子の保有及び同毒素産生性の確認試験、並びに菌種同定を実施可能な体制となっている。
今後の課題:
C. ulcerans感染症の発生頻度は少ないものの、事例発生時は迅速な検査が必要となるため、地方衛生研究所においては常時から検査体制を整備しておく必要がある。また、日本における本感染症の実態は正確に把握されておらず、今後の調査研究の充実が期待される。
問題点:
なし
関連資料:
【関連資料(例:研究所報告、行政報告、代表文献)】
病原微生物検出情報,46,110(2025)
