SFTSウイルス:女性が感染、死亡…国内初、ダニが媒介
毎日新聞 2013年01月30日 20時28分(最終更新 01月30日 23時06分)
マダニが媒介するSFTSウイルス=国立感染症研究所提供
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厚生労働省は30日、ダニが媒介する新種の感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」で、山口県内の成人女性が死亡したと発表した。原因となるSFTSウイルスは11年に特定されたばかりで、国内で感染により患者が死亡したと確認されたのは初めて。
厚労省によると、SFTSは09年ごろに中国で発生が報告され、致死率は12%程度と推定される。死亡した患者は、野山に生息するマダニの一種にかまれて感染したとみられる。今のところ有効な治療薬やワクチンはない。
山口県の患者は、昨年秋に発熱や下痢などの症状が出て白血球や血小板の数が低下し、約1週間後に死亡した。国立感染症研究所(東京都)で患者の血液を調べたところ、SFTSウイルスが見つかった。患者には最近の海外渡航歴がなく、持病などもなかった。国内でダニにかまれ、感染したとみられる。厚労省は30日、類似の患者を診察した場合の情報提供を、各都道府県に要請した。
患者から見つかったSFTSウイルスの遺伝子を調べたところ、中国で見つかったウイルスとは塩基配列がわずかに異なっていた。厚労省は元々、日本にもこのウイルスが存在していた可能性が高いとみている。
厚労省は「この一例だけで、野山に入ることのリスクが高くなったということではない。また、人から人へうつることはほとんどないため、今後、急激に患者が増える可能性は小さい。ダニが媒介するウイルスは他にもあり、ダニにかまれて発熱などの症状が出た場合は、すぐに受診してほしい」と話している。【久野華代】
◇イエダニとは別種 中国で170例以上発症
国内で初めて、患者の死亡が確認された「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」。病気の特徴や予防方法などをまとめた。
Q どんな病気か。
A 感染すると、6日?2週間の潜伏期間を経て、発熱や嘔吐(おうと)、腹痛、下痢、下血などの症状が表れる。また、血液中の白血球や血小板の数が減少し、全身状態が悪化する。中国ではこれまでに7省で約170例以上の発症が確認されている。09年に報告された当初は致死率が30%とされたが、その後に発症例が多数報告されて現在は12%程度とされている。
Q 感染経路は。
A 中国では、ダニにかまれて感染した患者が大半だが、患者の血液や体液に家族が触れて感染したケースもある。インフルエンザウイルスなどのような飛沫(ひまつ)感染のおそれはない。
毎日新聞 2013年1月30日