平成25年8月から9月にかけて当保健所管内において8例の麻しんの発生があった。同時期に近隣地域においても発生があったため疫学調査で得られた情報を交換したところ医療機関Aが感染経路である疑いが濃厚であった。
行動調査から管内8例のうち7例が8月中に医療機関Aを訪れていることが判明し、他には接点がなかったこと及び発病前1か月は海外渡航歴がないことがわかった。そこで、近隣3保健所にも情報提供し、そこで発生した麻しん患者と医療機関Aとの関連について調査した結果、遺伝子型が判明した12例の遺伝子型はすべて日本常在ではないB3型であり、日本国内では稀な型であった。これらの結果から、今回の麻しんの感染源が同一であることが裏付けられた。
住民への対策として、患者家族等接触者にはワクチン接種歴を確認できない場合は接種を強く勧め、患者接触者(学校・職場等)への情報提供を依頼して注意を促した。
医療機関等に対しては、保健所健康危機管理連絡網を活用し、麻しんの発生届があるごとに情報提供した。さらに医療関係者へは、今回は患者間で直接接触がないにもかかわらず同じ空間を使用しただけで感染が拡大したことを踏まえ、改めて麻しんウイルスの感染力の強さを認識し、院内における感染予防対策の危機管理を促した。
今回の患者はほとんどがワクチン未接種及び不明な者であること、ウイルスが国内に常在するものではなく海外から持ち込まれたものであることから、予防接種率を上げることで感染を防ぐことができる。
10月15日に海外渡航者の発生があり、新たな感染を危惧して警戒態勢をとっていたが、その後1か月以上新たな届出がなかったため、11月21日をもって終息とした。