No.134 セラチア菌による院内感染

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性感染症
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:東京都立衛生研究所
発生地域:東京都世田谷区
事例発生日:2001年12月
事例終息日:2002年1月
発生規模:疑い例9名(1名死亡)確定例12名(6名死亡)
患者被害報告数:
死亡者数:7名
原因物質:Serratia marcescens
キーワード:セラチア、血流感染、ヘパリン生食、院内感染

背景:
Serratia marcescensは、古くから日和見感染菌として、感染防御能の減弱した患者での発症が認められている。また化学療法の進歩に伴う耐性菌の増加は薬剤耐性セラチア感染症としての病像を作り上げている。セラチアは呼吸器感染症、尿路感染症の原因菌として臨床材料から比較的多く検出されている。2001年10月~2002年1月の3ヶ月間に全国の医療機関(241施設)において患者血液から分離された頻度は約2.4%である。

概要:
2002年1月、東京都世田谷区内の脳神経外科病院(病床数33床。以下「I病院」とする。)の病院で、13日間で24人の入院患者が発熱し、そのうち7名の患者が死亡した。院内感染を疑い患者定義を確定し、調査を開始した。疑い例は、平成13年12月20日から14年1月15日の間に1日以上入院し、38.5℃以上の発熱があったものとし、確定例は、疑い例のうち、血液から薬剤感受性、PFGEが一致するセラチアが分離されたものとした。この事例は、感染経路の特定は出来なかったが、短期間に多くの患者が集中発生したことから、点滴を介し患者の血管内に直接菌が侵入した感染ルートが推定された。

原因究明:
国立感染症研究所感染症情報センターFETP及び世田谷保健所による聞き取り調査、カルテ調査の結果、ヘパリン加生理食塩液によるヘパリンロックの可能性が高いことが判明した。しかし、ヘパリン生食液の瓶の拭き取り調査、残液等から菌は検出できなかった。

診断:

地研の対応:
世田谷保健所はI病院感染症対策委員会、I病院感染症専門調査班を設置し発生原因の究明を行った。衛生研究所は保健所からの依頼で、病院内の拭き取り検査、患者分離菌の生化学性状検査、薬剤感受性検査、PFGEを行い、患者由来株、環境由来株について菌の同一性試験を実施した。また東京都衛生局医療計画部医務指導課は特別医療監視チームを設置し、衛生研究所は特別医療監視に基づく病院内における病原菌汚染調査を実施した。

行政の対応:

地研間の連携:
特段の連携はなかった。

国及び国研等との連携:
国立感染症研究所、地研とも専門調査班の班員として、調査に当たった。基礎調査としてヘパリン生理食塩液中での増殖実験を感染症研究所が担当した。

事例の教訓・反省:
平成11年に墨田区内の病院でセラチアによる院内感染が発生し、同様の調査を実施していたため、検査に関しては順当におこなわれた。しかし、7名の死亡を受け、東京都衛生局、世田谷区、報道(メディア)への対応に混乱があった。医療安全課はこのことにより「院内感染予防対策マニュアル」を作成し、小規模の病院、診療所に配布した。

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料:
セラチア院内感染事故対策報告書 世田谷区 平成14年5月