No.351 輸入ウチムラサキ(大アサリ)によるSRSV、A型肝炎食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:ウィルス性食中毒
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:東京都立衛生研究所
発生地域:東京都江戸川区
事例発生日:2002年3月20日
事例終息日:2002年4月20日
発生規模:喫食者数 86名、患者数 胃腸炎 44名 肝炎 2名
患者被害報告数:
死亡者数:
原因物質:SRSV、A型肝炎ウイルス
キーワード:輸入食品、ウチムラサキ、二枚貝、食中毒、SRSV、A型肝炎ウイルス

背景:
近年、我が国の輸入食品に対する依存度は増加を続け、カロリーベースでは約60%となっている。輸入食品に起因する食中毒の原因物質としては、コレラ、赤痢菌等の細菌に関心が集中している。しかし、二枚貝を中心にウイルス汚染された食品に起因する食中毒事件も増加傾向にある。

概要:
2002年3月19日に江戸川区内の飲食店で会食料理(大アサリ紹興酒風味蒸しを含む)を喫食し、3月20日~22日にかけて下痢、吐き気等の食中毒症状を呈した患者がいるとの通報があった。発症率は44/86名(51%)であり、主症状は下痢81%、吐き気57%、腹痛49%、嘔吐41%であった。患者糞便、輸入業者が保管中のウチムラサキからSRSVが検出された。約1ヶ月経過後の4月18日~20日にかけて、2名が発熱、倦怠感、腹痛等の症状を呈し、抗体検査によりA型肝炎ウイルスに感染したことが判明した。

原因究明:
管轄保健所より患者糞便、輸入業者の保管する冷凍ウチムラサキが当研究所に搬入され、食中毒起因ウイルスの検索を行った。検査材料は、患者糞便49件、食品3件であり、このうち患者糞便23件、食品2件からSRSVが検出された。また、肝炎患者の入院先の病院において抗体検査を行い、患者2名はA型肝炎ウイルスに感染していたことが判明した。

診断:

地研の対応:
当研究所において食品および患者材料からのウイルス検索を行った。SRSVとA型肝炎ウイルスはRT-PCR法、A群ロタウイルス・アストロウイルス・腸管アデノウイルスはELISA法、C群ロタウイルスは逆受身赤血球凝集法により検査を行った。検出されたSRSVとA型肝炎ウイルスのPCR産物からdye-terminatorにより遺伝子配列の決定を行った。

行政の対応:
原因施設を管轄する江戸川区保健所を中心とした疫学調査を実施し、食品衛生法に基づく食中毒事件として対応を行った。

地研間の連携:
同一輸入業者から供給されたウチムラサキを原因食品とする食中毒事件が静岡県浜松市内においても発生し、検出されたSRSV・A型肝炎ウイルスの遺伝子情報について情報交換を行った。

国及び国研等との連携:
当研究所から感染症情報センターに食品に起因する流行・集団発生の情報として報告した。

事例の教訓・反省:
今回の事例では1回の輸入による通関量は4トン以上に達し、多くの都県に流通していたことが明らかとなった。このうち複数の自治体においてSRSV・A型肝炎ウイルスに起因する食中毒事件が発生し、輸入食品の安全性の確保、ウイルス汚染された製品の排除が重要課題であると示された。

現在の状況:
輸入業者が保管していた同一通関日の食品材料についてSRSV・A型肝炎ウイルスおよび貝毒の検査を行った。その結果、SRSV・A型肝炎ウイルスが検出された製品については、充分な加熱調理を行ってから食材提供を行うように表示することを指導した。また、貝毒が検出されたロットについては回収が指示された。
この他、輸入食品の安全性を確保するために市販されている輸入二枚貝類のウイルス汚染状況調査を行っている。

今後の課題:
近年輸入食品の増加は著しく、その安全性確保が重要課題となっている。今回の事件のように汚染された食品の国内流通が開始されると、多くの自治体において事件発生につながる事例の報告が相次いでいる。今後の対策として、検疫における検査態勢の強化が必要と考えられる。
SRSVの検査においては、食品中の汚染ウイルス量が微量であることから検出感度の向上等の検査法の改良が必要と考える。

問題点:

関連資料: