[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:奈良県保健環境研究センター
発生地域:奈良県、滋賀県、富山県
事例発生日:2001年2月下旬
事例終息日:2001年3月中旬
発生規模:
患者被害報告数:6名(3県)
死亡者数:0名
原因物質:腸管出血性大腸菌0157:H7 VT1(+) VTII(+)
キーワード:腸管出血性大腸菌0157:H7、ファミリーレストラン
背景:
概要:
平成13年3月17日、県内病院から奈良保健所に病原大腸菌O157を原因菌とする患者(9才男児)発生の届出があり、同保健所が初動調査を実施し、患者住所地の桜井保健所へ連絡があった。
喫食調査により、患者はファミリーレストランA店で3月10日に家族とともに食事をし、患者のみがビーフ角切りステーキを食べていることが判明した。
同様の患者の発生が富山県及び滋賀県で届け出られており、いずれも同一チェーンレストランで食事をしており、共通の原因食材として同ステーキが疑われた。
3月21日にA店の立入調査を行い、施設の拭き取り検査と食材(ビーフ角切りステーキ)の細菌検査を実施した結果、同食材から患者と同型のO157を検出したため、同店を原因施設として特定し、3月24日からの2日間の営業停止を命じた。
原因究明:
本件については探知直後に富山県から同様患者発生の情報を得ることができた。
同食材(ビーフ角切りステーキ)は埼玉県にある食肉処理業者が輸入した食肉をテンダライズ処理及びタンブリング処理を行っていることが判明し、各地に保管されていた原料食肉も検査の結果同型のO157に汚染されていたため、汚染された食材が広範囲のレストランチェーンに出回ったことになった。
また、同チェーンレストランの調理マニュアルでは、中心温度の確保を念頭においていなかったため、焼き加減をレアと注文した一部の客の調理に際して十分な加熱を行わずに客に提供したことにより、O157に感染したものと推定される。
診断:
地研の対応:
搬入された施設の拭き取り6検体(バット表面、ハサミの柄、ハサミの刃等)、食材3検体(使用前食品)、水1検体(調理場排水)より原因追求の為細菌検査を実施した。その結果食材1検体より0157:H7を検出した
行政の対応:
平成13年
3月17日 奈良保健所に病院から患者発生の通報あり。通常の感染症患者としての調査を開始
3月19日 奈良保健所から桜井保健所へ感染症患者調査票到着、家族健康調査及び家族検便の実施
3月21日 富山県及び滋賀県から同様の患者発生の情報あり。
3月21日 A店へ立入調査(拭き取り、排水及び食材の収去)。
3月24日 2日間の営業停止を命じる。
3月26日~ 健康相談窓口の設置と無料検便の実施(同一チェーンレストランを利用し、ビーフ角切りステーキを食べた人を対象として。)その結果12名が申し出、うち10人が検便を受けたが、全て陰性であった。
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
患者分離菌株、食材分離菌株0157のDNAパターンの一致を見て、確認後国立感染症研究所へ菌株搬送した。同様事例の滋賀県株、富山県株との一致も確認された。
事例の教訓・反省:
O157患者発生の場合、通常は感染症として初動調査を行う。
喫食調査において飲食店で食事をしていたことが判明しても、単発の発生である場合はそれだけで食中毒事件として扱いにくく、本件の場合も他県からの情報が全くなかった場合は食中毒として立件できていたかどうかは不明である。
テンダライズ処理等の特殊な加工を行った食肉については、中心部まで各種細菌に汚染されている可能性が十分考えられるため、十分な中心温度の確保の重要性を改めて認識した。
また、この内容を飲食店営業者に広く周知することが重要と考え、その後の講習会等普及啓発活動の題材として紹介した。
現在の状況:
原因施設については新しい調理マニュアルの作成、中心温度の測定、自主的な食材の検査や拭き取り検査の実施等を行っている。
しかし、多数の同業他者はどの程度このような内容を認識し実行しているかは不明であ
り、今後の再発も予想される。
今後の課題:
問題点:
関連資料: