[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:静岡県環境衛生科学研究所
発生地域:静岡県浜松市(浜名湖)
事例発生日:1996年11月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:推定患者数:患者の発生なし
死亡者数:
原因物質:麻痺性貝毒
キーワード:アサリ、カキ、麻痺性貝毒、アレキサンドリウム・カテネラ、動物試験
背景:
日本の二枚貝の毒化については日本全域で麻蛛性貝毒、東日本で下痢性貝毒の発生が認められている。静岡県では過去26年間、農林水産省(県林業水産部)およぴ県健康福祉部の依頼により浜名湖産カキ・アサリの貝毒(麻痺性貝毒およぴ下痢性貝毒)の検査を当研究所が実施してきた。
1995年まで浜名湖産アサリ・カキの毒化は認められなかったが、1996年において初あて浜名湖産アサリ・カキから規制値を越える麻痺性貝毒(4MU/g)が検出された。
概要:
1996年11月12日に浜名湖の北部水域で麻痺性貝毒の原因ブランクトンの1種であるアレキサンドリウム・カテネラ(566個/ml)による赤湖が発生しているとの情報が県林業水産部浜名湖分場から連絡があった。さらに、数日後浜名漁業共同組合はアサリ・カキを出荷自主規制を突施しているので早急に麻痺性貝毒の検査を当所に依頼したいとの県林業水産部浜名湖分場から再度の連絡があった。
1996年11月25日アサリ3件、カキ3件が当所に搬入され、アサリ2件、カキ1件から規制値を越える麻痺性貝毒(4MU/g)が検出されたので、県林業水産部は浜名湖全域のアサリ・カキの出荷自主規制を実施した。
11月28日はアサリ7件、カキ7件を検査したところアサリ1件(前回検出された地点)から麻痺性貝毒(4MU/g)が検出された。しかし、カキからは検出されなかった。その後、カキの出荷自主規制の解除の12月4日まで毎週2回、1回にカキ7件及びアサリ7件を、さらに、アサリは出荷自主規制が解除された12月16日まで毎週2回、1回に7件を検査した。
原因究明:
厚生省の定めた定法(昭和55年7月1日環乳第30号、貝毒の検査法について)で実施した。しかし、麻痺性貝毒の毒素成分についての究明は実施しなかった。
診断:
地研の対応:
静岡県では過去26年間、農林水産省(県林業水産部)およぴ県健康福祉部の依頼により浜名湖産アサリ・カキからの貝毒の検脊を実施していたので技術的な問題はなかった。しかし、毎週14件の分析および検査結果を午後1時までに県林業水産部に報告(夕刊の締切り時間)するため、担当スタップだけでなく他の職員も動員した(分析は2個班、合註1-6名)。
行政の対応:
1)検体採取及び採取した検体を当所への搬送は県林業水産部の全面的な協力をえた。
特に検休はすべてムキ身の状態で、当所への搬入も毎回午前8時20分頃までには到着した。
2)県林業水産部は11月25日浜名湖金域のアサリ・カキの出荷自主規制を実施したが、健康福祉部も市場に流通している浜名湖産のアサリ・カキの回収命令を魚介類取扱営業者に通知した。
3)県林業水産部は出荷自主規制の解除時期を決定するため「浜名湖産貝類の出荷自主規制の解除に関する判定会議」を12月3日に設置し、さらに、1997年7月15日「浜名湖貝毒実施要項」を作成し、今後の貝毒の発生に備えた。
地研間の連携:
0.1規定塩酸をムキ身に加えてホモゲナイズ、その後加熱して麻痺性貝毒の抽出を実施するが室温では検体の放冷に長時間を要する。この問題について茨城衛研に相談したところ流水中で放冷しても良いとの回答をえた。
国及び国研等との連携:
県林業水産部は自主規制の解除時期について農林水産省と相談し、解除時期を3回連続
して規制値(4MU/g)以下であれぱ良いとの回答をえた。
事例の教訓・反省:
行政対応も順調に推移し、特になし。
現在の状況:
特になし
今後の課題:
1)県林業水産部は生産者側、健康福祉部は消費者側に立って(販売禁止の解除)検査を当所に依頼する。しかし、依頼する検体の産地は同じである。検査する側に立ってみると無意味と感じることがあった。
2)今後麻痺性貝毒の毒素成分を決定する必要がある。
問題点:
関連資料:
文献:興津知子、杉山寛治、窪田勉、他、Alexandrium catanellaによる浜名湖産カキおよびアサリの麻痺性貝毒の調査、静岡県環衛研報告、39, 53-56, (1997)