[ 詳細報告 ]
分野名:化学物質による食品汚染
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:広島市衛生研究所
発生地域:全国
事例発生日:1988年
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:推定患者数:0名
死亡者数:0名
原因物質:シアン化水素
キーワード:シアン化水素、チリ産、ぶどう
背景:
概要:
1988年3月、米国国務省から、在米日本大使館に対し、FDAがチリより輸入したSEEDLESS RED GRAPES(種なしぶどう)よりシアン化合物を検出したため、すべてのぶどう及び他の果実を差し抑えるとともに、全米市場よりこれらを撤去するよう求める旨のプレステートメントを発表したとの連絡があり、外務省を通じ、その旨厚生省に連絡があった。
当時、日本国内において流通しているぶどうの多くは、輸入品であり、チリ産がその約20%を占めていた。事件発生後チリから輸出されたものはなかった。また、このことから、厚生省は、チリから輸入されるぶどうについては、当面輸入を見合せるよう、輸入業者を指導し、既に輸入されているチリ産ぶどうについては販売を見合せるよう、流通業者を指導した。
また、都道府県は、市場調査及び保健所及び衛生研究所において食品の安全性の確保のためチリ産ぶどうのシアン化合物の試験を行った。
衛生研究所等において行った試験からはチリ産ぶどうからシアン化合物は検出されなか
った。
原因究明:
輸入食品ということもあり、輸入状況等の市場調査及び衛生研究所等での検査が中心となった。
輸出国側の調査として外務省を通じ、真相の究明を行ったが、十分な情報を得ることができなかった。
診断:
地研の対応:
行政からの依頼により早急に試験できるよう対応した。幸いなことに、今回問題となった有害化学物質がシアン化合物であり、標準品の確保、試験方法等検討に時間をとられることなく、保健所等の市場調査と並行して取り組むことができた。
行政の対応:
厚生省からの通知をもとに、輸入業者、販売業者及び販売数量等の調査を行った。
店頭等で販売されていたものについては販売を行わないよう指導し、すでに購入している消費者に対しては食べないように指導した。試験品として収去したものについては保健所及び衛生研究所において検査を依頼した。
地研間の連携:
対象有害化学物質が一般的なものだったため、標準品・試験方法等の提携を行うことはなかった。
また、シアン化合物が検出されたぶどうがなかったため、国等との協議もなかった。
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
今回のケースは、幸いにも対象食品からシアン化合物を検出することなく事件を終えることができた。しかし、食品は常に摂取するものであり、その安全性の確保は重要な課題である。輸入食品の増加に伴う食品の安全性に対する不安は根強く、その一要因として他国の状況が把握しにくいことに起因している。衛生研究所等においては通常の検査に留まるだけでなく、常に不慮の事故を想定した検査体制の整備が望まれる。また、情報のネットワーク化による迅速な情報伝達が必要である。
現在の状況:
食品の安全性の確保は常に考えて試験等を行っているが、流通する食品の多様化・国際化は一行政機関だけではカバーできていない。上述したように情報の共有化等を押し進め、効率的・効果的な対応のできる体制整備が必要である。
今後の課題:
不慮の事故に対して、迅速に対応するため以下のことが望まれる。
1)情報の共有化・一元化
2)分析機器等の更新
3)分析技術・危機管理等の研修
4)標準品等の迅速な供給ルートの整備
問題点:
関連資料:
特になし