[ 詳細報告 ]
分野名:化学物質による食品汚染
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:高知県衛生研究所
発生地域:高知県幡多郡三原村
事例発生日:1975年
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:2名
死亡者数:1名
原因物質:パラコート
キーワード:パラコート,除草剤,しょう油,農薬中毒
背景:
概要:
1975年1月高知県幡多郡三原村において,すきやきが原因食と考えられる食中毒事例が発生した。患者は山林労務に従事する一家族の夫(60才)妻(58才)の2名で,潜伏期間約20時間で,腹痛,下痢を主徴とし病院で受診したところ,糖尿病,胃腸炎,高血圧症等と診断された。夫は発病8日後に発作を起こし死亡,死因は脳卒中,糖尿病と報告され妻は急性腎炎で加療した。その後の調査により,すきやきに使用したしょう油がすきやきの材料の1つであるこんにゃくを紫色に変色させたことが判明した。以上のことからしょう油の使用残品が食中毒被検試料と疑われ当衛生研究所に送付され,検査の結果除草剤パラコートが検出された。
しかし,しょう油への汚染原因については不明に終わった。
原因究明:
有機塩素系農薬,有機リン系農薬,重金属,等の汚染物質については,異常値は示されなかった。しかし,問題しょう油において紫外部258nmに強い吸収をもつことがわかり,これを原因物質として,分析を進めた。その結果,原因物質として可視部吸収,IRスペクトルなどによりパラコートと推定した。
診断:
地研の対応:
極めて特殊な農薬汚染事例と考えられたので,その概要については,食衛誌 18, 201(1977)で報告した。
行政の対応:
報告と同時に保健所の担当者が現場に赴き聞き取り調査を行った。しかし,しょう油からパラコートが検出されたことにより,その,汚染原因については,事件との関わりもあり,警察の捜査にゆだねられた。
地研間の連携:
限られた地域での特殊な事例のため他機関との連携はおこなわなかった。
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
これまで全く不明の有害性化学物質の分析であったため有害物質の性状,分析方法などを集積したデータ集の必要性と,大量生産される製品の単独中毒例は,ややもすれば軽視され原因不明のまま終わるケースが多いが,その解明については十分慎重な配慮が必要であると痛感した。
現在の状況:
今後の課題:
問題点:
関連資料: