No.830 揮発性有機化合物による地下水汚染

[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:岐阜市衛生試験所
発生地域:岐阜市
事例発生日:1984年
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:0名
死亡者数:0名
原因物質:テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン
キーワード:地下水汚染、揮発性有機化合物、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン

背景:
環境庁(現環境省)は、昭和57年、58年度に実施した地下水汚染実態調査から、トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物による地下水汚染の広域的な広がりがあることを発表し、59年に「トリクロロエチレン等の排出に係る暫定指導指針」を定めた。また、厚生省(現厚生労働省)は59年2月に、水道水中のトリクロロエチレン等について「暫定的な水質基準」を定め、さらに8月には「有機塩素系溶剤の使用管理に係る暫定的措置等」を定め、汚染防止等の措置について指導することとなった。岐阜市においてもその実態を把握し、対策等を実施することとなった。

概要:
昭和59年9月から60年2月にかけて、トリクロロエチレン等を使用する事業場及び廃棄物最終処分場を調査したところ、排出水のある74事業場のうち11事業場で排出水の管理目標値を超えていた。また、調査事業場等とそれら周辺井戸258件を調査したところ、7事業場周辺井戸が、水道水の暫定基準値を超過していた。暫定基準値を超えていた物質は、すべてテトラクロロエチレンであった。
昭和60年2月から61年12月にかけて、汚染7地区周辺井戸2,685件を検査したところ、459件が水道水の暫定基準を超えていた。そのうち9件がトリクロロエチレンの暫定基準も超過していた。
昭和61年4月から汚染地区の中で22箇所を選定し、定期的にモニタリング調査を実施した。経年的なモニタリングの結果は様々であり、一概に減少傾向とはいえない状況であった。
平成9年3月に地下水の環境基準が設定されたこと、さらに汚染7地区の内、南部の2地区では汚染範囲が拡大している可能性があることから、平成12年11月から13年1月にかけて南部地区の再調査を実施したところ、汚染範囲が拡大していることが確認された。2月に調査結果を公表し、「岐阜市地下水汚染対策本部」を設置し、住民説明会、健康診断等を実施した。公表後の依頼調査を含めて調査井戸は1,434件、基準超過井戸は390件。健康被害はなし。環境基準を超えた物質はテトラクロロエチレン。汚染範囲は3.51km2。
他の汚染5地区においても順次再調査を実施。3箇所の地区で環境基準を超す井戸は確認されず、地下水等の拡散等による自然浄化が進んでいるものと考えられる。しかし、その他の箇所では依然環境基準を超す井戸がみられた。また、汚染地区の再調査に伴って、別の新しい汚染地区も判明した。環境基準を超えた物質はテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン。

原因究明:
土壌ガス及びボーリング調査により汚染源の確定調査を実施した。南部地区の1箇所は汚染源直近での汚染は深度10mより浅い帯水層と考えられ、土壌汚染対策は、検討の結果、土壌ガス吸引法及びエアスパージング法が最も適する浄化法とされ、実施。中間報告で良好な結果を得ている。
南部以外の1箇所は環境省の浄化実証試験で実施中。

診断:

地研の対応:
当試験所では、調査井戸水中のテトラクロロエチレン等の揮発性有機化合物の分析を実施した。

行政の対応:
地下水汚染調査を行い、汚染が判明した井戸水を使用している世帯に対して、飲用指導・水道水への切り替え等の指導を行ってきた。
再調査で、汚染範囲が拡大していることが確認されたため、技術助役を本部長とする「岐阜市地下水汚染対策本部」を設置し今後の対応を協議した。公表後、住民説明会を実施。相談窓口を設置、希望者に健康診断を実施した。大学医学部教授を委員長とした「健康診断判定委員会」を設置、健康診断結果の判定を行った。
また、大学教授等の学識経験者を委員とした「地下水汚染検討委員会」を設置、汚染範囲の確定、調査方法、浄化対策等の協議の場とした。
南部の汚染地区は、環境基準を超えた井戸水だけで生活している世帯が多いため、浄化
対策が最重要課題とし、南部地区の1箇所で汚染源の確定調査を実施。汚染源と確定された場所で、現在浄化中である。
その他の汚染地区で1箇所については、汚染源の確定調査を実施し、環境省の「平成14年度地下水浄化汎用装置開発普及等調査における実証試験」として浄化中。その他の汚染地区ではモニタリング調査を実施し、経過を監視。
平成14年度は、過去にトリクロロエチレン等を使用していた事業場周辺の井戸水について、順次再調査中。

地研間の連携:
当該事例については、地研間における連携はなし。

国及び国研等との連携:
汚染地区の1箇所は上記の環境省の「平成14年度地下水浄化汎用装置開発普及等調査における実証試験」の汚染サイトとして認定され、浄化実証試験が実施されている。

事例の教訓・反省:
関連する行政側の環境部、保健福祉部、水道部の業務役割を明らかにし、連携を密にして、市民等への対応を速やかにした。

現在の状況:
汚染地区の2箇所において汚染土壌を浄化中。南部地区のもう1つの汚染源と思われる場所においても、汚染源の確定調査を実施、最終報告待ちである。
他の汚染地区ではモニタリング調査を実施。
また、平成14年度は、過去にトリクロロエチレン等を使用していた事業場周辺の井戸水について、順次再調査中。

今後の課題:
地下水汚染の原因施設の特定と汚染土壌の浄化。

問題点:

関連資料: