[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:大阪府立公衆衛生研究所
発生地域:全国・全世界
事例発生日:1975年頃
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:
死亡者数:
原因物質:トリハロメタン類や揮発性有機塩素化合物
キーワード:塩素処理、水道水、飲料水、THM、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、揮発性有機塩素化合物
背景:
米国における地下水と表流水を原水とする発ガンリスクの違いから、上水道における滅菌処理の塩素によって生成するクロロホルム等の揮発性有機ハロゲン化合物が生成し、それらがヒトの発ガンに寄与しているという報告があった。また、水道水の調査の過程で、地下水原水がトリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等の揮発性有機塩素化合物に汚染されていることも判明した。
概要:
飲料水の殺菌剤として遊離塩素を用いると、消毒過程でトリハロメタンが生成することが1974年に明らかとなった。米国環境保護庁は暫定第一種安全飲料水法がもうけられた。原水の汚濁が高くても塩素で浄化できるて安全であると信じ切っていた水道界はパニックであり、実際、相当な濃度のTHMを検出する上水もあった。
一方、地下水系では一般にTHMの生成率が低いが、ハイテク産業の廃棄物のトリクロロエチレン等がTHMの濃度を遙かに越えるオーダーで検出される場合があった。
微量有機物における安全な飲料水の意識と、高度処理、水源の保全の始まりとなった。
原因究明:
THMは水道原水中に溶存する有機物と滅菌用塩素によって生成する。トリクロロエチレン等は溶剤として使用していたものが、地下浸透して地下に溜まり、溶解したものが揚水されたため。
診断:
地研の対応:
測定方法の検討、実態調査、原因究明、対策を検討した。
行政の対応:
基準値(暫定値)の設定、各浄水場での現状の把握と生成能試験による潜在的に生成が予想されるTHMの濃度の把握、新しい汚染物質に対する厚生省の対応が始まった。
地研間の連携:
強いて言えば、臭素含有THMの標準がなかったので、我々が合成した標準を一部であるが配布した。
国及び国研等との連携:
国内のTHM分析能力が十分でなかった時代であったので、国の依頼分析として他府県の上水の調査も行った。
水道のTHM対策では中間塩素処理やオゾン+活性炭の併用処理の付加処理を対策に加えた。地下水のトリクロロエチレン関係では取水停止後、曝気等の処理を行い、除去する方針を打ち出した。
事例の教訓・反省:
初期には、THM中間物質の分解により時間経過によって増加するため、+の誤差を生じたが、pH調整によって正確な値が得られるようになった。また、米国のパージトラップに対して、ヘッドスペース法の確立された。器機の導入と同時に、精度管理が必要となった(昭和57年から実施)。
現在の状況:
THM等が、水道の基準項目となり、GC-MSやそのオートメ化によって正確かつ分析が容易となった。
今後の課題:
微量化学物質の分析方法は比較的早期に解決され、実用化ができるが、生体影響については時間がかかる。1つ1つの生体影響はではなく、複合影響(毒性)が検討されるべきであろう。
問題点:
関連資料: