No.845 A化学鹿島事業所のベンゼン及びエチルベンゼン漏出事故

[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:茨城県衛生研究所
発生地域:鹿島郡神栖町、A化学鹿島事業所
事例発生日:1997年10月
事例終息日:1997年11月
発生規模:
患者被害報告数:0名
死亡者数:0名
原因物質:ベンゼン及びエチルベンゼン
キーワード:ベンゼン、エチルベンゼン、地下水汚染、水質検査、衛生部、井戸水

背景:
ベンゼンはC6H6分子量78.11でガソリンの一成分として存在するが、薬品の原料として1981年時で410万トン生産され、ガソリンのオクタン価を高めるための添加剤、スチレン、合成ゴム、合成洗剤、ニトロベンゼン、フェノール、シクロヘキサン等の製造に使用される。
健康への影響としては、高濃度で暴露すると目眩、嘔吐、頭痛、眠気、平行感覚減少、昏睡等中枢神経系統に影響を与える。空気を介して約25,000ppmの濃度で暴露すると直ちに死に至る。(NAS1976)、非致死レベルでは薬物依存性があるとされている。なお骨髄に対する毒性としては血小板が減少し再生不能性貧血症を引き起こすとされている。その最低レベルは約10ppmである。(CHANG1972)

概要:
A化学鹿島事業所(鹿島臨海工業地帯、鹿島郡神栖町)で合成樹脂製造プラントから大量の有害物質ベンゼンが地下に漏れ出したことが平成9年10月13日にわかった。同事業所の説明によると合成樹脂や合成ゴムを製造する「第三スチレンモノマープラント」の地下約1mにある埋設配管(直系約10cm)に亀裂が入り原料となるベンゼン約25~50立方メートルが漏れ出した。配管は鋼鉄製で亀裂は腐食が原因らしい。早急に回収措置を取りドラム缶で約50本分を回収した。ベンゼンは数力月にわたり流出したと見られるが平成9年6月時の定期点検、定期修理時では発見できなかったと説明している。この事故の内容を県環境対策課が受け地下水汚染対策として立入検査及び水質検査が行われた。

原因究明:
当該工場周辺の井戸水10検体について、溶媒抽出GCMS(日本水道協会1993年版上水試験法準拠)によりベンゼン及びエチルベンゼンの定量試験を実施したが検出されなかった。なお漏出の原因は埋設配管に亀裂が入りベンゼン等約25~50立方メートルが流出したものである。配管は鋼鉄製であったので亀裂の原因は腐食が原因とされた。

診断:

地研の対応:
A化学鹿島事業所(鹿島郡神栖町)のベンゼン及びエチルベンゼン漏洩事故発生の件で、事故発生管内保健所である潮来保健所から周辺住民の飲料水汚染調査のため周辺井戸の水検査依頼があった。これを受け当地研で周辺井戸水10件について検査を実施した。結果は0.001mg/L以下であり漏洩物質は検出されなかった。

行政の対応:
A化学鹿島事業所では製造プラントの埋設配管亀裂によるベンゼン及びエチルベンゼンの漏洩で地下に漏れでたことが10月13日にわかったが県等関係機関への通報は事故から14日後の27日であったことが明らかになった。このため茨城県では、平成9年11月6日に公害防止協定に基づく立ち入り検査を実施すると同時に事業所内の24箇所の水質検査を実施したが地下水からはベンゼン及びエチルベンゼンは検出されなかった。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
ベンゼン及びエチルベンゼン等の検査用標準液の確保ルートを常日頃準備しておくことが不可欠である。

現在の状況:
その後問題になるような事は起こっていない。

今後の課題:

問題点:
特になし

関連資料:
1) 飲料水中の各種化学物質の健康影響評価」日本水道協会(1987)
2) 「薬科学大辞典」広川書店(1994)
3) 上水道試験法・日本水道協会(1993)
4) 「水道用語辞典」日本水道協会(1997)
5) 「化学辞典」東京化学同人(1994)