[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:沖縄県衛生環境研究所
発生地域:沖縄県宮古島
事例発生日:1989年
事例終息日:1993年
発生規模:
患者被害報告数:0名
死亡者数:0名
原因物質:
キーワード:宮古島、硝酸性窒素、地下水、地下ダム、地下水脈、窒素負荷源
背景:
沖縄県本島の南西約340kmに位置する宮古島は、面積158.6Km2、周囲114.6Kmで、宮古群島最大の島であり、最高標高108.6mの平らな隆起珊瑚礁石灰岩の島である。
島で使用される飲料水、農業用水などの生活用水、産業用水のすべては地下水に頼っており、その利用総量は約2.2万m3/日に達する。また、世界的に例の少ない地下ダムが、現在建設中のものを含めて3つがあり、地下水確保の先進地域としても注目を集めている。
その一方で、地表における産業や住民生活の発展と多様化に伴い、地下水水質の汚染も懸念されており、水質保全のための対策の重要度も同時に高まっている。
概要:
宮古島には3ヶ所の主要飲料用水源地があり、1966年2mg/l前後であったこれら水源地の地下水の硝酸性窒素濃度は、農地の増大に伴う化学肥料の施肥量の増加と生活排水等の地下浸透により年々徐々に上昇し、一部では1989年に9mg/l前後を示すようになった。
この地下水の慢性的で漸増的な汚染の進行を重大視した当地では、宮古島の4市町村(平良市、城辺町、下地町、上野村)と宮古島上水道企業団は1988年宮古島地下水水質保全対策協議会を設立し、1989年4月から宮古島地下水水質保全対策を開始した。
まず、地下水の汚染現状調査が開始され、さらに地下水中の窒素濃度に影響を及ぼす全ての要素を検討する総合的な調査を行った。
窒素負荷源別の調査の結果、主な負荷源は肥料であることが推定された。
その後、主要水源地の地下水の硝酸性窒素濃度は1987-1989年をピークとして徐々に減少傾向を示し、1996年には7mg/l前後に減少した。
原因究明:
地下水の窒素を負荷源別に算定すると生活排水約4%、家畜排泄物約5%、肥料が約72%、土壌中の窒素が約19%と試算され、主な負荷源が農業の肥料にあることが推定された。また、測定ポイント別にみて、人口密度の高い地域や農地面積比率の高い地下水域で高く、これらの低い地域では低いことも同負荷源で説明できる。
さらに、年次別にみると肥料供給量特に化学肥料供給量と地下水硝酸性窒素濃度の変動は若干のタイムラグはあるが、ほぼ一致する。
診断:
地研の対応:
宮古島の4市町村で結成している宮古広域圏事務組合からの協力以来を受け、1989年から1993年までの5年間、地下水測定ポイント33ヶ所のアンモニア性窒素、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の測定を実施した。
行政の対応:
宮古島の4市町村で結成している宮古広域圏事務組合が中心となり、各種調査を実施した。
地研間の連携:
特になし
国及び国研等との連携:
特になし
事例の教訓・反省:
宮古島の4市町村が挙島一丸となって宮古島地下水水質保全対策協議会を設立し、総合的な調査を実施することにより、住民の教育的な効果も引き出しながら実効を上げつつあることは、今後の環境保全問題の良範になるものと思われる。
現在の状況:
地下水水質保全調査は現在(1997年)も継続中であり、地下水中の硝酸性窒素濃度は7mg/l前後で横ばい状態にある。
今後の課題:
宮古島の地下水脈は22~23の流域に分類されるが、地下水の水質は利水目的により、地下水流域別に目標基準値を設定する必要がある。その目標値を達成するための具体的な計画、窒素削減のための技法等の検討も併せて進めるべきであろう。
問題点:
関連資料:
1)宮古広域圏事務組合・宮古島地下水水質保全対策協議会;宮古島地下水水質保全調査報告書、pp224~pp97(1990~1996)。
2)普天間朝好他;宮古地下水の硝酸性窒素汚染について、沖縄県衛生環境研究所報、28、111(1994)。