[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:横浜市衛生研究所
発生地域:横浜駅構内(西口)
事例発生日:1995年4月19日
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:548名
死亡者数:0名
原因物質:不明
キーワード:異臭事件,サリン,ソマン,マスタード,有機リン系農薬,有機塩素系農薬,尿,血液,衣類
背景:
1995年3月20日に東京で地下鉄サリン事件が発生しており,異臭や刺激臭について,市民の関心が高まっていた。
概要:
1995年4月19日(水)
12:58頃 横浜駅地下通路中央付近で異臭発生咳き込み,喉がいがらっぽいと多数の人が訴える10人が救急車で病院へ搬送
13:00頃 JR関内駅 大宮発大船行き電車到着
2人咳き込み 病院へ搬送
13:02 JR石川町駅 電車内で気分が悪くなり病院へ運び込まれる
14:00 横浜市対策本部を設置東京都から連絡[救急救護班の対応,薬品備蓄の応援の必要があれば応援する]
18:00頃 横浜市大浦舟病院救命救急センターでサンプリングした尿と血液及び港湾病院でサンプリングした衣類を衛生研究所へ搬送
原因究明:
横浜市大浦舟病院救命救急センターでサンプリングした尿と血液及び港湾病院でサンプリングした衣類について衛生研究所で次の検査を行った。
1)救命救急センターでサンプリングした尿と血液の検査結果
尿:6検体分析,血液:5検体分析
・サリン,ソマン,マスタード不検出
・有機リン系農薬(39項目)不検出
・有機塩素系農薬(14項目)不検出
2)港湾病院でサンプリングした衣類の検査結果衣類:4検体分析
・サリン,ソマン,マスタード,クロロピクリン 不検出
・サリン分解生成物 不検出
原因については究明できなかった。
診断:
地研の対応:
衛生研究所の環境衛生課及び化学課の職員でプロジェクトチームをつくり,横浜市大浦舟病院救命救急センターでサンプリングした尿と血液及び港湾病院でサンプリングした衣類について検査を行った。
行政の対応:
(対策委員会等も含む)横浜市対策本部を設置
地研間の連携:
長野県衛生公害研究所より「松本市における有毒ガス中毒死事件に係わる原因物質の検索について」の送付を受けた。
国及び国研等との連携:
環境庁環境保健部環境安全課より「サリン等の分析法マニュアル」の送付を受けた。
事例の教訓・反省:
尿,血液中のサリン,ソマン,マスタードの検査については
1)異臭の原因物質が特定されていない状況下での分析依頼である。
2)標準物質がない。
3)尿,血液についての抽出方法など前処理の方法が明らかでない。
(大気,水,土壌の分析法のみ)
4)サンプル量が少ない(尿6件:15~30ml,血液5件:約2ml)
5)検査結果の公表までの時間的な制約があった。
(検体搬入:4月19日18時頃,新聞発表:1)翌20日午前中までに尿,血液それぞれ1検体の結果報告 2)21日朝9時までに全検体の結果報告を求められた。)
こうした状況下の中で,分析方法が最良の方法で行うことができたとは思っていないが,考え得る最善の努力をして検査結果を出した。
現在の状況:
• 緊急時におけるインターネットによる文献検索及び情報収集ができるようになった。
• 課を超えてプロジェクトチームをつくり,応援体制で検査を行うことができるようになった。
• 余裕をもった機器の整備が必要であることが分かった。
今後の課題:
• 危機管理における局等に対する迅速な情報提供を行うことができる体制の整備
• 緊急時検査に対応できるプロジェクトチームの構成
• 迅速かつ正確な検査が可能となるような最新の設備機器の確保
問題点:
関連資料: