No.952 横浜駅西口のショッピングモールで発生した異臭事件(2)

[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:横浜市衛生研究所
発生地域:横浜駅西口のショッピングモール
事例発生日:1995年4月21日
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:24名
死亡者数:0名
原因物質:不明
キーワード:異臭事件,クロロアセトフェノン,クロロベンジルマロノニトリル,クロロピクリン,衣類

背景:
1995年3月20日に東京で地下鉄サリン事件が発生しており,異臭や刺激臭について,市民の関心が高まっていた。

概要:
1995年4月21日(金)
17:40頃 市民病院より第1報「横浜駅西口のショッピングモール(以下Aモール)で何人かがせき込んで症状を訴えている」
18:30 市災害対策室より,「17:40頃,Aモール3階において7人が地下警備室へ,5人は病院へ」
18:30 ~ 18:40 Aモール4階で新たに6人が症状を訴えて,5人が病院へ
18:50 Aモール4・5階で新たに3人が症状を訴える
18:55 Aモールで従業員に健康チェック
20:00 警察・消防による現場検証
20:15 市民病院の患者5人分の着衣を衛生研究所へ搬送

原因究明:
市民病院でサンプリングした衣類について衛生研究所で次の検査を行った。
1)検体:カーディガン等の衣類5検体の検査結果
2)検査項目及び検査結果:刺激性ガス(3項目)
・クロロアセトフェノン 不検出
・クロロベンジルマロノニトリル 不検出
・クロロピクリン 不検出
原因については究明できなかった。

診断:

地研の対応:
衛生研究所の環境衛生課及び化学課の職員でプロジェクトチームをつくり,市民病院の患者5人分の衣類について検査を行った。

行政の対応:
横浜市対策本部を設置

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
警視庁科学捜査研究所より「護身用催涙性スプレーの異同識別法」の文献入手

事例の教訓・反省:
衣類中のクロロアセトフェノン,クロロベンジルマロノニトリル,クロロピクリンの検査については、
1)異臭の原因物質が特定されていない状況下での分析依頼である。
2)被害者の症状等から,催涙性ガス等を疑い,その中から使用頻度が高く,標準品が入手できた物質について検査を行った。
こうした状況下の中で,考え得る最善の努力をして検査結果を出した。

現在の状況:

今後の課題:
•危機管理における局等に対する迅速な情報提供を行うことができる体制の整備
•緊急時検査に対応できるプロジェクトチームの構成
•迅速かつ正確な検査が可能となるような最新の設備機器の確保

問題点:

関連資料:
1) 「護身用催涙性スプレーの異同識別法」:科学警察研究所報告法科学編 Vol.41, No.2, May 1988
2) Gas-Liquid Chromatography of Some Irritants at Various Concentrations: Analytical Chemistry Vol. 43, No.3, March 1971.
3) Gas Chromatographic determination of riot-control agents: J. Chromatogr., 68 (1972)245-247.