No.972 照明施設による眼炎症発生事例

[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:沖縄県衛生環境研究所
発生地域:沖縄県宮古郡伊良部町
事例発生日:1974年11月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:推定患者数:1,500名以上
死亡者数:0名
原因物質:水銀灯から発生した紫外線
キーワード:水銀灯、紫外線、眼炎症状

背景:
水銀灯は照明、消毒、殺菌、殺虫用と多方面に利用されているが、水銀灯の外球が破損された場合、水銀封入体(発光体)から放射される紫外線量は量そのものとしては4倍程度に増えるにすぎないが、有害パワーとしては100倍にも増え、危険であるとされている。

概要:
沖縄県宮古郡伊良部町の伊良部小学校に1973年に体育館が建設され、学校行事や町の集会などに利用されるようになった。1974年11月、小学校創立88周年記念式典及び祝賀会が催された際、職員6名、児童210名が当日あるいは翌日にわたり、眼の充血や痛み及び眼が開けられない等の症状を訴えた。保健所で調査の結果、体育館に出入りした人々の中で眼に異常を感じた者が延べ千数百名に及ぶことが判明した。
主訴としては眼炎症状のみで、他の呼吸器系、神経系あるいは消化器系については何の異常もなかった。眼炎症状も特に治療をせずとも1~2日で消失した。
現場調査の結果、体育館に取り付けられた水銀灯12灯のうち、4灯の外球が破損しており、そこから放射される紫外線が原因であると推定した。

原因究明:
体育館内外の環境調査やホルムアルデヒド、オゾン、有機塩素剤等の試験の結果異常は検出されず、体育館内に2時間以上館内に居た人や破損水銀灯の近くに席を占めた人々により高い頻度で被害がでていることから、原因は外球の破損した水銀灯から発生した紫外線によるものと結論付けた。
現地では、有害紫外線の放射照度の計測器がなく、紫外線の波長の分光定量は実施しなかったが、後日、紫外線の照度を計算すると、外球の破損されない水銀灯の約70倍の有害紫外線に曝露されていたと推定された。

診断:

地研の対応:
保健所からの連絡で、現場体育館内外の環境調査及び各種化学物質の調査を実施し、体育館に取り付けられた水銀灯の外球破損を突き止めた。

行政の対応:

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
紫外線を利用した水銀灯はいろいろな場所で使用されているが、その管理や破損時の取り替え等の迅速な対応が必要である。

現在の状況:
早急な取り替えを勧告した後はこのような症状は発生してない。
ただ、その後1976年沖縄県八重山郡与那国町の中学校で同様な事例が発生し、40名の被害者が出た。原因は同じく体育館の照明用の水銀ランプの外球の破損によるものであり、この場合は1灯のみであった。

今後の課題:
水銀灯の管理と破損時の迅速な取り替え

問題点:

関連資料:
1)森山朝孝 他;紫外線による眼炎症発生事例について、沖縄県公害衛生研究所報、第10号、17ー19(1976)
2)照明学会雑誌、57、No.4(1973)
3)岩崎電気株式会社;水銀灯に関する有害紫外線について、H400からの有害紫外線放射(1975)