[ 詳細報告 ]
分野名:ウイルス性感染症
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:秋田県衛生科学研究所
発生地域:秋田市
事例発生日:2003年6月9日
事例終息日:
発生規模:家族2名
患者被害報告数:
死亡者数:
原因物質:マイコプラスマ
キーワード:SARS関連検査、マイコプラスマ肺炎、中国吉林省
背景:
2003年SARS伝搬確認地域から来県した家族が激しい咳と熱のため市内の病院を受診。秋田市保健所からの依頼でSARS関連検査を実施した。
概要:
2003年6月6日にSARS伝搬確認地域(中国吉林省)から両親とともに来県した4才女児が、9日午後に、38度の熱と咳をともない市内の病院を受診した。X線所見にて肺炎像が確認されたので、上記病院は秋田市保健所に届けた。秋田市保健所は指定医療機関に患者を搬送し、そこで検体を採取し当所に搬送した。また、患者の父親も咳などの症状を訴えたため検体を採取した。当所にてSARS関連検査を実施した。SARSウイルスについてはRT-PCR法にて検査を実施した。
検査の結果、女児、父親ともに、SARSウィルス陰性、インフルエンザウイルス陰性、RSウィルス陰性、アデノウイルス陰性、A群溶連菌陰性、及びレジオネラ属菌が陰性であったが、マイコプラスマ抗体検査では女児が凝集法にて640倍を示し陽性となった。検査結果が判明後、保健所、関連機関に電話で報告した。今回の事例はマイコプラスマによる肺炎と診断されたことから国立感染症研究所への検体送付はおこなわなかった。
原因究明:
X線撮影の結果、肺炎所見がみられたため、当所においてSARSウイルス検査の他に、肺炎等の症状を示すインフルエンザウイルス、RSウィルス、アデノウイルス、A群溶連菌、マイコプラスマ及びレジオネラ属菌等の迅速検査を実施した。検査の結果、女児の血液検査で、マイコプラスマ抗体が凝集法にて640倍を示し陽性となった。したがって今回の事例はマイコプラスマによる肺炎と診断された。
診断:
地研の対応:
搬送されてきた検体について、上記SARS関連検査を実施、検査結果が判明後、保健所、医療機関、県の健康対策課に連絡した。
行政の対応:
医療機関には管轄保健所職員が赴き、検体等の回収を行い、当所への搬送をおこなった。
地研間の連携:
今回の事例では特になし。
国及び国研等との連携:
最初の事例のため、国立感染症研究所へ検体搬送について連絡をした。今回の事例はマイコプラスマによる肺炎であったことから同研究所へは、検体の搬送はしないことにした。
事例の教訓・反省:
最初の関連事例であり、いつにもまして緊張して検査した。特に検体を処理する過程では慎重に確認しながら行なった。健康危機管理事例はいつ起きるかわからない。したがって、退所後の連絡先等を常に把握し、また普段から医療機関、保健所等への連絡が可能な体制作りをしていたが、再度その必要性を感じた。また試薬等の有効期限のチェック等も怠らないように努めたい。
現在の状況:
SARS行動計画に従い検査体制は整えている。リアルタイムPCR検査の機器を整備したので、これまでの検査時間より短縮される。
今後の課題:
患者が多く発生した際には、検体処理に時間がかかり、同時に検査時間にも影響してくる。
問題点:
関連資料:
「SARS可能性例として疑われた事例検査を経験して」安部真理子、第44回東北医学検査学会抄録(2003年、弘前市)