No.997 SARS関連事例2

[ 詳細細報告 ]
分野名:ウイルス性感染症
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:秋田県衛生科学研究所
発生地域:大館市
事例発生日:2003年7月25日
事例終息日:
発生規模:1名
患者被害報告数:
死亡者数:
原因物質:肺炎球菌
キーワード:SARS関連検査、肺炎球菌、台湾、SARS伝搬地域解除

背景:
2003年7月5日から7月12日まで台湾に滞在していた男性が帰国後、発熱、咳などの症状を訴えて、大館市内の病院を受診した。肺炎所見も認められたため、同病院は保健所に届け出た。それを受けて当所でSARS関連検査を実施した。

概要:
2003年7月5日から7月12日まで台湾に滞在していた男性が帰国後、7月25日に大館市内の病院を受診した。台湾はSARS伝搬地域に指定されていたが、WHOにて、7月5日付けで解除になった。従って今回は対象外ではあったが、解除後ということもあり、念のために、SARS関連事例として届けた。検査の結果、SARSウイルス陰性、インフルエンザウィルス陰性、RSウィルス陰性、アデノウィルス陰性、及びA群溶連菌は陰性であった。塗抹染色にてグラム陽性菌を確認し、PCR法にて肺炎球菌と同定した。また、ペア血清によるSARSウィルス抗体価測定の依頼があったため、ペア血清がそろった段階で(8月12日)、国立感染症研究所に検体を送付した。検査の結果、SARSウィルスの抗体価上昇は認められなかった。

原因究明:
X線撮影の結果、肺炎所見がみられたため、当所においてSARSウィルス検査の他に肺炎等の症状を示すインフルエンザウィルス、RSウィルス、アデノウィルス、A群溶連菌の迅速検査を実施した。上記検査はすべて陰性であったが、細菌の可能性が否定できず、喀痰の塗抹染色を試みた結果、グラム陽性球菌を確認した。その後、PCR法にて肺炎球菌陽性となった。今回の事例は肺炎球菌による肺炎と診断された。ペア血清によるSARSウィルス抗体価の測定は国立感染症研究所の検査では共に20倍以下で、抗体価の上昇は認められなかった。

診断:

地研の対応:
搬送されてきた検体について、上記SARS関連検査を実施、検査結果が判明後、保健所、医療機関、県健康対策課に連絡した。

行政の対応:
医療機関には管轄保健所職員が赴き、検体等の回収を行い、当所への搬送をおこなった。

地研間の連携:
今回の事例では特になし。

国及び国研等との連携:
当事例はSARS伝搬確認地域からの帰国ではあったが、指定が解除されていたことから、対象外事例であった。解除後の来県であったが、初期医療機関からの希望があり、SARS関連検査を実施した。また、ペア血清による抗体価測定も依頼されたため、ペア血清が揃った段階で国立感染症研究所の了解を得て、検体を送付した。

事例の教訓・反省:
事例発生の7月25日には世界においてSARS伝搬確認地域指定はなかった。しかし、今後このような事例が生じることも考えられるので、いつ発生するかわからない現状では、常に検査体制を整えておく必要性を改めて感じた。

現在の状況:
SARS行動計画に従い検査体制は整えている。リアルタイムPCR検査の機器を整備したのでこれ までの検査時間より短縮される。

今後の課題:
SARS伝搬確認地域指定解除後に発生した事例についても同様に念のために対応することが必要と思われる。

問題点:

関連資料:
特になし