No.1008 小学校において発生した腸管出血性大腸菌O157集団感染事例

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:栃木県保健環境センター
発生地域:栃木県 鹿沼市
事例発生日:2002年9月24日
事例終息日:2002年9月27日
発生規模:
患者被害報告数:感染者 10名
死亡者数:1名
原因物質:腸管出血性大腸菌O157
キーワード:腸管出血性大腸菌、O157、集団発生、HUS

背景:
腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で、全数把握の3類感染症となり、年間3,000-4,000人の患者及び保菌者が届けられている。また感染力も強く二次感染の患者や年少者ではHUSによる死亡者も発生するなど、注目すべき疾病である。

概要:
2002年9月、県内の医療機関より2名のEHEC患者の届出があった。翌日には別の医療機関より1名のEHEC患者の届出があり、この患者はHUSを発症し入院していた。この患者3名はいずれも同じ小学校の1年生であったことから、集団発生を疑い管轄保健所は直ちに調査に着手した。その後、この小学校1年生の患者家族(3歳)がEHEC患者となり、HUS及び脳症のために死亡した。

原因究明:
児童教職員全員の検便。小学校環境(動物、水道、洗面所、トイレ、砂場等)検査の実施。共同調理場、使用水、検食等の検査。事件前の学校行事(なし狩り)の関係農家の検査(使用水、トイレ、梨、家族検便等)などを行ったが、児童(1年生)以外からの菌の検出はできなかった。

診断:

地研の対応:
分離菌株VT遺伝子の有無の確認をリアルタイムPCRにより速やかに行った。また分
離された菌株をパルスフィールドゲル電気泳動により解析し、DNAパターンが一致したことから、同一由来株による感染であることを証明した。

行政の対応:
感染拡大防止のため小学校での消毒・手洗いの励行等の衛生指導や保護者説明会を開催し父母らの不安や疑問の解消を図った。医師会と連携し、患者発生や感染状況の速やかな把握を行った。市教育委員会と連携し、市内小中学校の欠席状況調査や食中毒防止の啓発を行った。市保健福祉部と連携し、広報誌やインターネットによりEHEC感染症に対しての普及啓発を行った。

地研間の連携:
特段の連携はなかった。

国及び国研等との連携:
国立感染症研究所感染症情報センターFETPを交え、腸管出血性大腸菌集団感染に関する専門家委員会を設置し、感染経路に関する解析評価、今後の対策に対する検討、報告書の作成等を行った。

事例の教訓・反省:
1 感染した児童やその家族に、精神面での支援体制、プライバシー保護を重視した上での地域住民への情報提供等の検討が必要であろう。
2 医療機関、検査機関、教育委員会等と情報の共有化や連携について、今後改善、検討が必要であろうと思われる。
3学校職員や地域住民に対し、感染症予防のための普及啓発の推進が必要であろう。

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料:
小学校において発生した腸管出血性大腸菌O157集団感染事例-栃木県,病原微生物検出情報(IASR),vol.24,No.6,p134-135(2003.6)