No.1099 雪茶による健康被害

[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:福岡県保健環境研究所
発生地域:福岡県須恵町
事例発生日:2003年8月
事例終息日:2003年12月
発生規模:
患者被害報告数:2名
死亡者数:0名
原因物質:不明
キーワード:雪茶(ムシゴケ)、健康食品、肝機能障害、健康被害、食中毒

背景:
雪茶(チベットの高原で採れる地衣類のムシゴケ)を痩身目的で数ヶ月飲用することにより肝機能障害を伴う健康被害事例が発生した。

概要:
雪茶の概要:製品名には、雪茶(ゆきちゃ、せっちゃ)、Snow Tea、Xue Cha等が用いられ、中国雲南省西北地方(チベット)の高原に生息している地衣類であるムシゴケ(学名:Thamnolia vermicularis Ach.)を乾燥させたもの。生のものは白色で約7cmの細長い管状の形態をしている。中国では、古くから生薬やお茶として利用されている。

事件の概要
テレビ番組で取り上げられた雪茶の脂肪分解効果を見て、痩身目的で雪茶製品5種類をインターネット購入した。患者親子は2003年8月下旬より同時に雪茶の飲用を開始し、母(61歳)は11月下旬まで、娘(26歳)は12月上旬まで摂取した。5~10gの雪茶を約2リットルの湯で煮出し、お茶代わりに1人当たり1日約1リットルを継続的に、医師より中止するよう指示されるまで飲用を続けた。
5種類の雪茶製品名及び販売者名
『雪茶』:合資会社コンパス(A)、株式会社トランスワーク(C)、株式会社清華(D)、有限会社河村農園(E)、『納西雪茶』:株式会社ジェイエムシー(B)
製品別摂取期間
製品A:8月下旬~9月中旬
製品B:9月中旬~10月上旬
製品C:10月上旬~10月中旬
製品D:10月中旬~10月下旬、
製品E:10月下旬~中止、
母は10月下旬の健康診断時の血液検査からGOT、GPT等の急激な上昇と、動悸、倦怠感が見られた。娘は11月に入り急激な食欲減退とともに体重減少が見られ、12月上旬に医療機関を受診したところ、血液検査からGOT、GPT等の上昇と黄疸が見られた。母は雪茶の摂取中止と通院により、これらの血液検査値は回復しつつある。娘は摂取中止と入院、加療によりこれらの血液検査値は回復しつつある。
親子とも、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎等を示唆する検査は陰性であり、当該製品の摂取中止後、肝機能の改善が見られていることから、雪茶の摂取による肝機能障害であることが疑われた。

原因究明:
FDA情報1-2)から地衣類に含まれるdibenzofuran骨格のウスニン酸(Usnic acid)が疑われた。ウスニン酸は体重減少のための食餌療法に使用され肝毒性がある。地衣類にはウスニン酸以外にも複雑な成分が含まれ、その毒性成分等については解明されていない状況である。

診断:

地研の対応:

行政の対応:
雪茶の飲用による健康被害の報告を受け、福岡県粕屋保健福祉環境事務所から搬入された雪茶製品についてフェンフルラミン、N-ニトロソフェンフルラミン、シブトラミン、脱N-ジメチルシブトラミン、マジンドールの5品目の検査をしたが、当該製品からいずれの医薬品成分も検出されなかった。このため行政処分等は実施していない。事件発生後、患者親子が飲用した雪茶製品を国立医薬品食品衛生研究所に送付した。国研で当該製品の成分について検索が実施されている。また、事件の概要については厚生労働省に報告し、同省ホームページに平成15年12月22日付け報道発表資料「都道府県等から報告されたいわゆる健康食品に係る健康被害事例について」として掲示され公開されている。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
今後、突発的な健康被害事例に対応するためには、常に情報の収集、究明を行うとともに国及び国研等の連携が必要である。

現在の状況:
特になし

今後の課題:

問題点:

関連資料:
1)Meadows M, Ensuring the safety of dietary supplements, FDA Consumer magazine, July-August 2004.
2)Crawford L, American Society for Pharmacology and Experimental Therapeutics and American Society for Nutritional Sciences, FDA, April 19, 2004.