[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都江戸川区
事例発生日:2003年7月16日
事例終息日:
発生規模:摂食者数32名
患者被害報告数:6名
死亡者数:0名
原因物質:ソラニン
キーワード:ジャガイモ、アルカロイド、ソラニン、チャコニン、小学校
背景:
ジャガイモ中に存在するグリコアルカロイドは、その95%がα-ソラニン及びα-チャコニンであり、これらを大量に摂取すると、吐き気、おう吐等の中毒症状を呈する。ジャガイモによる食中毒は、平成11年に福岡県、12年に神奈川県及び広島県、13年に栃木県で、いずれも小学校において学習の教材として栽培したジャガイモを摂食して発症している。成人の場合、α-ソラニン及びα-チャコニンの中毒量は200~400mgと言われているが、児童のグリコアルカロイドに対する感受性は成人に比べはるかに高いと考えられており、過去の中毒事例では、発症した児童のα-ソラニン及びα-チャコニンの合計摂取量は16.5mgと推定されている。
概要:
平成15年7月16日、江戸川区内の小学校で、教材として栽培したジャガイモをゆでて、児童及び教師が摂食したところ、32名中児童6名が摂食20分後から吐き気、おう吐等の症状を呈した。
原因究明:
江戸川区保健所より東京都健康安全研究センターに、1)ゆでジャガイモ残品、2)他のクラスのごみ箱から採取したゆでジャガイモ及び3)吐物、計3検体が搬入された。
ジャガイモに含まれるアルカロイドであるα-ソラニン及びα-チャコニンによる食中毒は全国で毎年のように発生しており、本事例も、患者の摂食状況及び症状から、ジャガイモのアルカロイドによる食中毒が強く疑われた。そこで、ゆでジャガイモ及び吐物中のα-ソラニン及びα-チャコニンの分析を行った。試料10gにメタノールを加えてホモジナイズした後、メタノールを加えて50mLとした。メタノール抽出液を5mL分取し水12mLを加えて混合し、あらかじめメタノール10mL及び水10mLでコンディショニングしたSep-Pak Plus C18カートリッジに負荷した。30%メタノール溶液5mLで洗浄した後、メタノール15mLで溶出した。溶出液は減圧下で濃縮乾固した。残留物にメタノール1mL加えて溶解し試験溶液とした。試験溶液はHPLCで分析を行った。HPLC条件は、カラム;Cosmosil 5C18AR-II(4.6mmi.d.x250mm)、移動相;アセトニトリル-0.05mMりん酸緩衝液(pH7.8)(65:35)、流速;1.5mL/min、カラム温度;40℃、検出波長;205nmで行った。その結果、1)ゆでジャガイモからα-ソラニンが35μg/g、α-チャコニンが88μg/g、2)ゆでジャガイモからα-ソラニンが53μg/g、α-チャコニンが98μg/g、3)吐物からα-ソラニンが12μg/g、α-チャコニンが22μg/g検出された。
本事例のジャガイモはいずれも1個10~20g程度の小型のイモで、芽の発生は認められなかったが、発症した児童はイモを皮ごと6~10個摂食しており、10mg以上のα-ソラニン及びα-チャコニンを摂取したと考えられる。患者の症状及びこれらの分析結果から、本事例は小学校で調理し、摂食したジャガイモによる食中毒と断定された。
診断:
地研の対応:
行政の対応:
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
現在の状況:
今後の課題:
問題点:
関連資料: