No.1110 ラーメン店が原因施設とされたEHEC O157によるdiffuse outbreak

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:福井県衛生環境研究センター
発生地域:福井県(小浜市、遠敷郡上中町)、京都府(舞鶴市、綾部市、福知山市、京都市)
事例発生日:2003年7月8日
事例終息日:2003年7月11日
発生規模:7月5日の飲食店(小浜市)利用者477名。
7月4日、5日の京都府内の飲食店(2店舗)の利用者は不明。
患者被害報告数:患者数6名,保菌者数5名(このうち,福井県は患者2名,保菌者3名)
死亡者数:0名
原因物質:EHEC O157:H7(VT1+2)
キーワード:EHEC O157、VT1+2、diffuse outbreak、キムチ、PFGE、プラスミド・プロファイル

背景:
病原微生物検出情報によれば、2002年と2003年の全国の腸管出血性大腸菌感染症集団発生において、菌検出者10人以上の事例は計29事例あるが、発生施設が飲食店であったのはこの事例を含めて2事例のみであり、この点では特異的な事例といえる。

概要:
平成15年7月13日と14日にEHEC O157感染症(VT1+2)として医療機関から届出があった患者について、若狭健康福祉センターが調査した結果、7月5日に小浜市内のXラーメン店(X店)で喫食していたことが判明した。さらに、7月17日京都市に届出があった患者(VT1+2)も、7月5日X店で喫食していたとの連絡が同市からあった。また、同日京都府に確認したところ、7月16日と17日に府に届出があった患者3名のうち、1名は7月5日にX店で、2名はそれぞれ7月4日と5日に京都府福知山市の同系列のY店で喫食していたことが判明した。原因食品として、県内の患者および保菌者の共通食品であるキムチ(本店が一括調達した)が考えられたが、7月17日に店内にあったキムチは7月5日分とは異なるロットであり、一応キムチを含む食材5検体および拭き取り5検体の検査をしたものの、O157は検出されなかった。
その後、健康福祉センターの指示による、濃厚接触者の検便により初発患者の同行者およびX店の従事者の1人からO157(VT1+2)が検出された。7月22日には福井県内の患者2名と保菌者2名(従事者1名を含む)のPFGEパターンが同一であることが判明した。
また、二次感染を防ぐため県は21日から27日まで、県内各健康福祉センターに相談窓口を設置し、7月5日にX店を利用した477人を中心に健康相談を受け付けたところ、7月5日の喫食者19名および7月7日から19日までの喫食者6名の糞便検査依頼があり、そのうち7月23日に受付をした7月5日喫食者1名(A)からO157(VT1+2)を検出した。福井県内では合計5名から検出されたことになる。京都府へはさらに2名の届出があり、合計すると京都府への届出者は5名、京都市への届出者は1名であった。患者および保菌者の利用日および利用店別にみると、7月5日のX店が7名、7月4日のY店が2名、7月5日のY店が1名およびX店従事者が1名であった。福井県と京都府の10名から検出された株のPFGEパターンは、A由来株(one band differ)を除いてすべて同一であることが判明し、共通の感染源からの曝露を受けていたことが示唆された。なお、プラスミド・プロファイルは10株すべて一致した。
今回の食中毒事例では、原因食品の供された日が特定されたため、二次感染を防ぐ目的で当日の喫食者を中心に糞便検査を受け付けたところ、喫食後18日目の検体から菌(PFGEパターンはone band differ)が分離されたことが注目された。

原因究明:
患者、患者と同一喫食者(保菌者)および従事者由来株のPFGEパターンを調べた結果、一致していたため原因施設と断定した。

診断:

地研の対応:
1)糞便50検体、食材5検体および拭き取り材料5検体についてO157の検査
2)医療機関および当センター分離株について、PFGEおよびプラスミド・プロファイルなどの検査

行政の対応:
1)糞便50検体、食材5検体および拭き取り材料5検体についてO157の検査
2)医療機関および当センター分離株について、PFGEおよびプラスミド・プロファイルなどの検査

地研間の連携:
京都府保健環境センターとは、患者および保菌者由来株を相互に分与し、PFGEの結果はメールで送付し、さらに患者等の情報を収集した。

国及び国研等との連携:
特に連携はしなかったが、分離株は通常どおり国立感染症研究所に送付し、PFGEパターンが同一であることを再確認した。

事例の教訓・反省:
1) 当日の利用者が非常に多かったことから健康相談窓口を開設したが、糞便検査の検体数がどのくらいになるか予想できなかった。
2) 原因食品はキムチと推定されたが、製造元が県外であったことから遡り調査ができなかった。

現在の状況:
特になし

今後の課題:
健康福祉センターでは当初は感染症ということで健康増進課が対応し、飲食店が関係していることが分かってからは、生活衛生課(食監)も対応するようになった。O157の発症は汚染食品の経口摂取が原因となるケースがほとんどであり、最初から生活衛生課も対応すると原因究明を早期に開始できてよいと思われる。

問題点:

関連資料:
ラーメン店が原因施設とされたEHEC O157によるdiffuse outbreak.病原微生物検出情報,Vol.24 No.10p.27-28,衛生微生物技術協議会第25回研究会講演抄録集,p.39