[ 詳細報告 ]
分野名:化学物質による食品汚染
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:鳥取県衛生環境研究所
発生地域:鳥取県
事例発生日:2001年12月
事例終息日:2002年3月
発生規模:
患者被害報告数:3名
死亡者数:0名
原因物質:N-ニトロソ-フェンフルラミン
キーワード:中国製ダイエット食品、健康食品、フェンフルラミン、N-ニトロソ-フェンフルラミン
背景:
概要:
2002年(平成l4年)7月l2日の新聞に、中国製ダイエット用健康食品による死亡者の発生が報道されたことを契機として、ダイエット用健康食品による健康被害が全国的な問題となった。
同日厚生労働省は、これらの事例に共通するものとして、「御芝堂減肥胶嚢(オンシドウゲンピコウノウ)」及び「紆之素胶嚢(センノモトコウノウ)」の2品目を被害の拡大を防止する意味から未承認医薬品(承認と許可を得ていない医薬品)として公表した。
本県では、7月16日までに保健所及び消費生活センターに対し3件の相談があり、倦怠感・肝機能障害といった服用者の健康被害が確認された。3件のうち1件は個人輸入により「御芝堂減肥胶嚢」を購入したものであった。残り2件は東京都の業者が「紆之素胶嚢」のカプセルを自社ブランド名「ラヴィータ2000スリム」及び「ラヴィータ2000スリムI」をつけて、詰め替えて販売していたものであった。
その後の全国的な調査で、多くの中国製ダイエット食品に、フェンフルラミン、N-ニトロソ-フェンフルラミンなどの医薬品成分が含有されていることが明らかになった。
原因究明:
フェンフルラミンの確認は、国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)の資料と地研の抄録を参考に分析を行った。試料をアセトニトリル/水(1:1)で抽出、遠心分離後、上澄液を減圧下乾固した。これに水を加え懸濁後、塩化ナトリウム飽和とし2mol/L水酸化ナトリウム溶液で弱アルカリ性とした。これを酢酸エチルで抽出し減圧乾固後、メタノールを加えて試験溶液とし、液体クロマトグラフィー/フォトダイオードアレー(LC/PDA)法による紫外部吸収スペクトルの確認、及び液体クロマトグラフィ-/質量分析(LC/MS)法によるマススペクトルの確認を行なった。その結果、LC/PDAでは、210nm付近に極大吸収波長を有するピークを認め、フェンフルラミンが確認された。また、LC/MSではm/z232にプロトン化分子とm/z159にフラグメントイオンが観察され、フェンフルラミンであることが確認された。
N-ニトロソ-フェンフルラミンの確認は、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課(事務連絡、平成14年7月24日)、N-ニトロソ-フェンフルラミンの分析法に従った。すなわち、試料をメタノ-ルで抽出して試料溶液とし、LC/PDA法による紫外部吸収スペクトルの確認、及びLC/MS法によるマススペクトルの確認を行なった。その結果、LC/PDAでは、210nm及び230nm付近に極大吸収波長を有するピークを認め、N-ニトロソ-フェンフルラミンが確認された。また、LC/MSでは、m/z261のプロトン化分子、m/z283のナトリウム付加イオン及びm/z159にフラグメントイオンが観察され、N-ニトロソ-フェンフルラミンであることが確認された。
その後、さらに甲状腺ホルモン(T3、T4)、カフェイン、ニコチン酸アミドを検出した。
診断:
地研の対応:
行政の対応:
地研間の連携:
すでにフェンフルラミンの研究発表をしている地研の抄録を参考にするとともに、地研・国衛研間で分析法について情報交換を行った。また、国衛研からは、事件発生後速やかに、N-ニトロソ-フェンフルラミン分析法についての情報提供があった。
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
当該事例では、迅速かつ正確に原因究明(試験検査)をする必要があり、地研や国衛研からの情報、資料を参考にして、分析法の検討を行なった。地研・国衛研間の情報交換が速やかに行なわれたことから、迅速に適切な試験が可能となり、健康危機事例に適切に対応できた。このような健康危機事例の原因究明に迅速・適切に対応するために関係各機関との情報交換並びに試験技術の充実の大切さが痛感された。
現在の状況:
技術的にはフェンフルラミン、N-ニトロソ-フェンフルラミンの分析についてはメソッドが確立している。また、当所では、LC/MS等の機器を保有しているのですぐに対応可能な体制である。
今後の課題:
問題点:
関連資料:
1) 安田一郎 他:「薄層クロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーによる寧紅茶及び類似中国茶中のフェンフルラミンの分析」東京衛研年報48,71-75,1997
2) 「個人輸入した未承認医薬品等の服用後に発生した健康被害事例について」厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課(平成14年7月12日、事務連絡)
3) 「N-ニトロソ-フェンフルラミンの分析法について」厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課(平成14年7月24日、事務連絡)
4) 「中国製ダイエット用健康食品(未承認医薬品)に関する調査結果の公表について」
厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課(平成14年7月24日、事務連絡)