No.1190 キャンプ中の飲食物を原因とする食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都あきる野市キャンプ村他
事例発生日:2004年7月17日
事例終息日:2004年7月18日
発生規模:喫食者数 92名
患者被害報告数:67名
死亡者数:0名
原因物質:不明
キーワード:キャンプ,湧水,Plesiomonas shigelloidesCampylobacter jejuniAeromonas hydrophilaAeromonas veronii biovar sobria

背景:
井戸水や湧水は、動物の糞便や人の生活排水によって汚染され、食中毒や感染症の原因となる場合がある。そのため井戸水や湧水などを食品に使用する場合は、定期的な水質検査を実施すること、水源を管理し状況に応じて塩素処理等を行う必要がある。しかし、その管理が不適切である場合や、飲用水として管理されていない湧水を飲用したことが原因となる食中毒事例が散見される。

概要:
平成16年7月17日から18日にかけて、キャンプ村のバンガローに宿泊し、キャンプ村の水や、自炊した食事を喫食したこどもクラブ92名のうち67名(72.8%)が、17日から21日にかけて、下痢(97%)、腹痛(48%)等の症状を呈し、食中毒と診断された。当該キャンプ村は飲用に適さない旨の表示のない未消毒の湧水を給水しており、本件発生の原因は複数の食中毒起因菌に汚染されたキャンプ村の水を飲用、もしくはその水を使用して調理された食事を喫食したことによると推定された。しかし、キャンプ村の水から検出された食中毒起因菌と患者糞便から検出された食中毒起因菌が異なったこと、そのためキャンプ村の水を原因食品と特定できなかったことから、行政上は、病因物質不明、原因施設不明の扱いとなった。

原因究明:
キャンプ村の給水は、水道水と未消毒の湧水(残留塩素を検出しない)のクロスコネクションであるにもかかわらず、飲用に適さない旨の表示はなかった。その水からはAeromonas hydrophilaAeromonas veronii biovar sobriaが検出された。参加者全員がその水をそのまま飲用するか、水出しの麦茶として未加熱で飲用していた。喫食状況について調査した結果、17日の昼食は各自持参した弁当、17日のおやつ、夕食、18日の朝食、昼食は自炊していることが判明した。本件の発症率は72.8%に達し、持参した食品が原因とは考えられない。また、水または麦茶のほかに、患者全員が摂取している食品はなかった。
患者糞便からは淡水中に生息するPlesiomonas shigelloidesと、鶏肉等の汚染と共に水系感染事例が多数報告されているCampylobacter jejuniが検出された。以上の事実等により、本件発生の原因は複数の食中毒起因菌に汚染されたキャンプ村の水を飲用、もしくはその水を使用し調理された食事を飲食したことによって発生したと推定された。しかし、キャンプ村の水及び患者糞便から検出された食中毒起因菌の種類が一致しなかったことから、本件の原因食品は水とは特定できず、またキャンプ村は食事を提供しなかったため、原因施設は不明となった。

診断:
7月20日に収去されたキャンプ村炊事場の水(残留塩素は検出せず)1件から、Aeromonas hydrophila及びAeromonas veronii biovar sobriaが検出された。原虫は検出されなかった。7月23日に採取された参加者糞便(患者糞便30件、健常者糞便4件)のうち、患者糞便4検体からPlesiomonas shigelloides、3検体からCampylobacter jejuniが検出された。

地研の対応:
7月20日に収去されたキャンプ村炊事場の水(残留塩素は検出せず)1件の細菌検査及び原虫検査、7月23日に採取された参加者糞便(患者糞便30件、健常者糞便4件)の細菌検査を実施した。

行政の対応:
行政上は、キャンプ村を原因施設とはしなかったが、飲用に適さない水をなんらの注意喚起もないまま給水した事実や給水設備が水道水と湧水のクロスコネクションであったことなどから、平成16年7月27日に管轄保健所からキャンプ村に対し、
・キャンプ村の給水設備におけるクロスコネクションを解消すること
・飲料水として管理されていない湧水の蛇口について「飲用不適」の表示をすること等の改善指導がなされた。また、健康局(現、福祉保健局)地域保健部長名で各都保健所長あて、「キャンプ場等における井戸水等の衛生管理指導の徹底について」の通知があり、都内キャンプ場等への指導が徹底された。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
本件は原因施設の特定はできなかったが、当該キャンプ村は衛生管理に多数の問題点があり、いつ食中毒事件が発生してもおかしくない状況であった。今回管轄保健所によってキャンプ村に対する改善指導が実施され、確実に被害の拡大防止がなされたと考えられる。

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料: