[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都
事例発生日:2005年7月19日
事例終息日:
発生規模:喫食者数:110名
患者被害報告数:67名
死亡者数:0名
原因物質:セレウス菌
キーワード:セレウス菌、Gilbert 1型、おにぎり、セレウリド
背景:
セレウス菌による食中毒は、嘔吐型と下痢型の二つのタイプがあるとされている。我が国での発生は、大半が嘔吐型であり、原因菌株の血清型はGilbert 1型が多い。嘔吐型食中毒では、食品中で菌が増殖する際に産生する毒素が病原因子となるが、近年、嘔吐毒素としてセレウリドが報告されている。
概要:
2カ所の学童保育施設で、おにぎり弁当を喫食した110名のうち、児童、指導員あわせて67名が嘔気、嘔吐症状を呈した。残品等の食品、弁当屋の拭き取り、患者の吐物やふん便から高率にセレウス菌(Gilbert 1型)が検出された。また、LC-MS法により、残品のおにぎりから嘔吐毒素セレウリドが検出された。
原因究明:
・当該弁当屋は、2カ所の学童保育施設に計113食の「おにぎり弁当」を配達し、その弁当を計110名の児童および指導員が昼食として喫食した。2カ所計67名の患者の共通食は、「おにぎり弁当」のみであった。
・弁当の残品、患者のふん便、吐物、ふき取り検体からセレウス菌が検出された。
・抽出法などを改良したLC-MS法により、残品の「おにぎり」からセレウリドが検出された。
・患者の症状は嘔吐を主症状とするセレウス菌による食中毒と一致した。
診断:
食中毒起因菌検査を行った結果、食品残品の「おにぎり」7検体中7検体および参考品11検体中3検体から、セレウス菌(血清型Gilbert 1型)が検出された。残品の「おにぎり」のうち5検体のセレウス菌数は3.3~6.0x108cfu/g、さらに、LC-MS法によりセレウリド(520~557ng/g)が検出された。
ふき取り21検体中16検体はセレウス菌陽性、うち15検体からはGilbert 1型菌が検出された。
ふん便65検体中44検体(患者43検体中28検体、非発症者20検体中14検体、調理従事者2検体中2検体)はセレウス菌陽性、うち43検体からはGilbert 1型菌が検出された。吐物16検体の全てからGilbert 1型のセレウス菌が検出された。
地研の対応:
食品(残品および参考品)、ふき取り、ふん便(患者、非発症者、調理従事者)、吐物について、食中毒起因菌の検査を行った。更に、食品残品の「おにぎり」について、LC-MS法によるセレウリドの検出を試みた。
行政の対応:
弁当を調製した当該施設に対し、6日間の営業停止処分(他に営業自粛1日)および取扱改善命令を行った。
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
国立感染症研究所感染症情報センターに、食品に起因する流行・集団発生の情報として計上した。
事例の教訓・反省:
当該施設は調理従事者2名で休みなく営業し、保健所の実務講習会にも出席せず、食品衛生の知識が不足していた。また、調理場の整理整頓、清掃も不良であった。
現在の状況:
原因施設は廃業。
今後の課題:
セレウス菌による食中毒事例は、疫学調査と従来の細菌検査に加え、LC-MS法によるセレウリド検査を行うことで、より詳細な原因解明が可能となった。本事例では原因食品のおにぎりからセレウリドが検出されたが、本法はすべての食品に対して対応できるまでには至っていない。今後の課題として、セレウス菌食中毒原因食品として多くあげられるスパゲティ、ピラフ等にも応用可能な検査法の開発・改良が必要である。
問題点:
関連資料:
門間千枝、石崎直人、小西典子、下島優香子、尾畑浩魅、仲真晶子、千葉隆司、新井輝義、井部明広、矢野一好、諸角聖:「おにぎり」から嘔吐毒素が検出されたBacillus cereus集団食中毒事例、第26回日本食品微生物学会学術総会(2005年11月、金沢)。