[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都、千葉県
事例発生日:2005年8月14日
事例終息日:
発生規模:喫食者数:255名
患者被害報告数:121名
死亡者数:0名
原因物質:黄色ブドウ球菌
キーワード:エンテロトキシンA、コアグラーゼIV型、黄色ブドウ球菌、弁当
背景:
黄色ブドウ球菌は、かつて我が国の細菌性食中毒の最も主要な病因物質であったが、近年発生数は漸次減少している。しかし2000年には関西地方で加工乳等を原因とした患者3,000名以上の大規模食中毒が発生した。一方、黄色ブドウ球菌食中毒の原因菌株のコアグラーゼ型はVII型が大半を占めていたが、近年はその割合が減少し、IV型が増加傾向にある
概要:
都内の仕出し屋から千葉県のコンサート会場にスタッフ用弁当が配達された。8月14日の夕食の弁当のうち「地鶏の照焼弁当」を喫食した255名のうち121名が吐き気、おう吐等の症状を呈した。食品残品、患者及び調理従事者のふん便、拭き取り検体から黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンA産生、コアグラーゼIV型)が検出された。弁当は、調製後喫食まで4-10時間、常温に置かれていた。
原因究明:
・当該仕出し屋は、8月11日から14日までの同コンサートのスタッフ用の朝、昼、夕、夜食用弁当を受注し、このうち、朝食と夜食は外注品を、昼食と夕食は自ら調製した弁当を配達していた。朝食と夜食を調製した外注業者の他の販売先に、類似患者の発生はなかった。
・14日の夕食のみを食べて発症した患者が確認されるなど、患者の共通食は14日の夕食の他にはなかった。
・14日の夕食の弁当残品および患者のふん便等から黄色ブドウ球菌を検出し、患者の症状は黄色ブドウ球菌による症状と一致した。
・14日の夕食に提供した「地鶏の照焼弁当」からエンテロトキシン(A型)が検出された。
・弁当は調製後喫食まで4-10時間、常温に置かれていた。
診断:
当センターにおいて、14日の夕食に提供された地鶏の照焼弁当と中華弁当の残品(各2食ずつ)を対象に、食中毒起因菌検査および食品中のエンテロトキシン検査を行った結果、いずれの検体からも黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンA産生性、コアグラーゼIV型)が検出された。地鶏の照焼弁当からはエンテロトキシンA(8~64ng/g)が検出された。ふき取り検体12検体中2検体(冷蔵庫取っ手、盛り付け台)からも同一型の黄色ブドウ球菌が検出された。ふん便検体では、患者11検体中6検体から、従業員7検体中3検体から、黄色ブドウ球菌が検出され、うち患者4検体、従業員1検体からは食品残品と同一型の黄色ブドウ球菌が検出された。
千葉市においても食品、患者ふん便、患者おう吐物の食中毒起因菌検査を実施し、黄色ブドウ球菌が検出されている。
地研の対応:
当センターにおいて食品(残品及び参考品)、ふき取り、患者ふん便、従業員ふん便について、千葉市において食品、患者ふん便、患者おう吐物について食中毒起因菌の検査を行った。
行政の対応:
原因施設を管轄する渋谷区保健所は、仕出し弁当を調製した当該施設に対し、6日間の営業停止(他に営業自粛1日)及び施設並びに取扱改善命令の処分を行った。
地研間の連携:
原因食品の仕出し弁当を調製した東京都と、患者が発生したコンサート会場のあった千葉市が連携して、調査および検査を行った。
国及び国研等との連携:
当センターから国立感染症研究所感染症情報センターに、食品に起因する流行・集団発生の情報として計上した。
事例の教訓・反省:
現在の状況:
今後の課題:
問題点:
関連資料: