[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:滋賀県衛生科学センター
発生地域:滋賀県内広域、京都府、大阪府、奈良県
事例発生日:2005年6月
事例終息日:
発生規模:8,555名
患者被害報告数:862名
死亡者数:0名
原因物質:黄色ブドウ球菌
キーワード:宅配給食弁当、食中毒、黄色ブドウ球菌
背景:
黄色ブドウ球菌による食中毒は、2000年に乳製品を原因食品とする大規模な食中毒が発生したことなどから食品衛生上重要な食中毒であることが再認識されている。今回、滋賀県内において黄色ブドウ球菌を病因物質とする大規模食中毒事例を経験したのでその概要を報告する。
概要:
平成17年6月21日、草津保健所に管内の医療機関から「食中毒様症状を呈している者がいる」との連絡があった。草津保健所で調査したところ、守山市・草津市内の事業所の職員等21名、京都府宇治市内の事業所の職員11名などが同様の症状を呈しており、いずれも同じ宅配給食弁当を喫食していることが判明した。また、その後の調査の結果、当日の弁当は近隣府県にも宅配されており、喫食者8,555名のうち有症者は862名で県内各地のほか、京都府、大阪府および奈良県と広範囲に及んだ。
有症者の主な症状は、下痢(68.5%)、腹痛(54.8%)、吐き気(53.8%)、嘔吐(48.7%)等であり、平均潜伏時間は5時間10分であった。
原因究明:
5検体の食品残品中から黄色ブドウ球菌A型エンテロトキシンが検出され、食品(21日の検食および弁当残品)34検体、有症者便6検体、有症者吐物1検体および食品加工業者1名からコアグラーゼIV型、エンテロトキシンA型の黄色ブドウ球菌が検出された。一方、食品9検体および有症者便1検体からセレウス菌が検出されたが、Bacillus cereus CRS gene PCR detection kitを用いてPCRを行った結果、10株すべてがセレウリド合成酵素(CRS)遺伝子は検出されなかった。また、草津保健所検査室においても弁当製造施設の施設ふき取り13検体中4検体、従事者手指ふき取り4検体中1検体、従事者便37検体中8検体および有症者便14検体中11検体からコアグラーゼIV型、エンテロトキシンA型の黄色ブドウ球菌が検出された。検出された黄色ブドウ球菌についてSma Iを用いてPFGEを行った結果、すべて同一パターンがみられた。
有症者の症状、潜伏時間、有症者および食品残品から黄色ブドウ球菌が検出されたこと等から本事例は6月21日の弁当が原因食事である黄色ブドウ球菌による食中毒と断定された。
診断:
黄色ブドウ球菌が検出された食品各品目中のエンテロトキシン量を測定したところ、弁当残品3品目に2~32ng/gのA型エンテロトキシンが検出されたが、6月21日の検食ではすべて不検出であった。
エンテロトキシンが検出された食品中の黄色ブドウ球菌量は1.0×107~6.4×108(CFU/g)であった。
地研の対応:
食品(原材料、6月20日および21日の検食、弁当残品)76検体、有症者便6検体、有症者吐物1検体、食品加工業者(弁当のおかず納入業者)施設ふき取り10検体および従事者便8検体について当センターで細菌検査を行った。また、当センターおよび草津保健所検査室で分離された菌株についてコアグラーゼ型、薬剤感受性試験、PCRおよびPFGEを行い、菌株間の関連性を調べた。
行政の対応:
食品(原材料、6月20日および21日の検食、弁当残品)76検体、有症者便6検体、有症者吐物1検体、食品加工業者(弁当のおかず納入業者)施設ふき取り10検体および従事者便8検体について当センターで細菌検査を行った。また、当センターおよび草津保健所検査室で分離された菌株についてコアグラーゼ型、薬剤感受性試験、PCRおよびPFGEを行い、菌株間の関連性を調べた。
地研間の連携:
京都府と検出された黄色ブドウ球菌の性状等について情報交換を行った。
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
現在の状況:
今回の食中毒事例は事業所への宅配弁当が原因であるが、同年4月から個人情報保護法が施行されたこともあり、文書による保健所の調査依頼や訪問時の調査でも氏名・住所等の個人情報を提供しない事業所があったとのことであった。食中毒調査の目的・意義についての理解の推進等および個人情報保護法の正しい理解と解釈が必要と思われる。
今後の課題:
問題点:
関連資料: