No.1290 弁当が原因によるSalmonella Enteritidis食中毒事例

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:滋賀県衛生科学センター
発生地域:滋賀県大津市
事例発生日:2005年10月
事例終息日:
発生規模:711名(喫食者数)
患者被害報告数:238名
死亡者数:0名
原因物質:Salmonella Enteritidis
キーワード:食中毒、弁当、Salmonella Enteritidis、潜伏時間、ファージ型(PT)47型

背景:
サルモネラ食中毒の平均潜伏時間は12時間といわれているが、当食中毒は平均潜伏時間54時間と潜伏時間が長く、Salmonella Enteritidis(以下「S.E」という。)が検出された有症者の中には散発下痢症か食中毒かの判断が困難であった大規模食中毒事例を経験したのでその概要を報告する。

概要:
平成17年10月5日(水)、大津市内の医療機関から「食中毒様の症状を呈する有症者を複数人診察した」旨、大津保健所に連絡があった。保健所が調査したところ、10月2日に管内の弁当屋で調理された昼食弁当を喫食した3学区10自治会の地区運動会参加者および夕食弁当(おかずのみ)を喫食した1グループの計711人のうち、238人が胃腸炎症状等を呈した。有症者の症状は、下痢227名、腹痛186名、発熱166名、頭痛81名で、以下倦怠感、悪寒、吐気、嘔吐等であった。また、潜伏時間は4時間から246時間(平均54時間)であり、100時間を超える有症者も8人いた。

原因究明:
最長潜伏時間(246時間)の有症者便1検体(医療機関で菌株が分離され、当所において血清型別等を実施)を含む19検体の有症者便および従事者便2検体の計21検体からS. Eが検出された。検出された21株のS.E株におけるBln I処理後のPFGE泳動像パターンはすべて同一パターンであり、ファージ型もすべて47型であった。有症者に共通した食事はこの日の弁当のみであること、また発症の状況が同様であることから、これらの弁当を調製した弁当屋を原因施設とするサルモネラ食中毒と断定された。しかし、施設・調理器具等のふき取り、食材および食品のいずれからもS. Eは不検出であり、また、S.Eが検出された従事者は2名とも当日調整された弁当を喫食していたため、原因食品および汚染源の特定には至らなかった。

診断:

地研の対応:
施設・調理器具等のふき取り29検体、食材および食品(残品または同一ロット食品)13検体、調理従事者便8検体、有症者便22検体、衛生害虫2検体の計74検体について細菌検査を行った。当センターおよび医療機関で分離された菌株については、血清型、薬剤感受性試験およびPFGE解析を行った。

行政の対応:
食品衛生法第55条の規定に基づき、同法第6条違反の原因施設として、平成17年10月7日から同年10月9日までの3日間の営業停止処分とした。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
国立感染症研究所に分離されたS.Eのファージ型別を依頼した。

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:
突出して長い潜伏時間(246時間)の有症者からもS. Eが検出され、喫食調査等の遡り調査等により食中毒患者と断定された。しかし、今回検出されたPT47型のS. Eは、近年、滋賀県内の散発下痢症由来患者からも多く検出されている株であったこと、さらにPFGE泳動パターンも非常によく似た泳動パターンを示していたことから、食中毒有症者か散発下痢症有症者かの判断が困難であった。
複数の制限酵素を用いてPFGEの検討を行ったが、PT47型のS.EはPFGEパターンにほとんど変化がなかったことから、複数事例でPT47型のS.Eが分離された場合にDiffuse outbreakか否かの判断が難しく、PFGEに変わる解析法の検討も必要であると考える。

問題点:

関連資料:
1) Food poisoning outbreak of Salmonella Enteritidis caused by Box lunch in Shiga Prefecture, Japan – Jpn. J. Infect. Dis., 59:406-407(2006)
2) PFGEによるSalmonella Enteritidisファージタイプ47型の分子疫学調査について-滋賀県衛生科学センター所報,VOL. 41:49-52(2006)