[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:大阪府立公衆衛生研究所
発生地域:大阪府大阪市
事例発生日:2005年1月に相談を受けた(初発の推定,2002年頃)
事例終息日:2005年3月
発生規模:患者1例
患者被害報告数:不明
死亡者数:0名
原因物質:輸入木材「ファルカタ」Falcata(学名Albiziafalcataria)という木材の粉じん
キーワード:輸入木材、ファルカタ、Falcata、Albiziafalcataria、皮内検査、抗原吸入試験
背景:
成人発症型中等度喘息の既往のある72歳男性木材家具製作作業者。60歳頃からは喘息の発作が治まっていた。69歳頃から工場に入ると喘鳴を伴った呼吸困難が出現。近医を週1回通院し服薬コントロールを継続していた。症例本人が作業中にファルカタを丸鋸で切った際に、症状が出現していることに気がついた。他の木材では、症状はなかった。症例本人が、府議会議員に相談し、府議会議員から大阪府立公衆衛生研究所に紹介を受けた。
概要:
症例の作業現場を訪問し、職場巡視を行った。その結果、ファルカタによる職業性喘息が疑われた。症例よりインフォームドコンセントを取得後、確定診断を得るため大阪府立呼吸器アレルギー医療センターで検査を実施したところ、皮内反応は即時型が陽性、沈降抗体反応は陽性、抗原吸入試験は即時型が陽性、遅発型は陰性であり、ファルカタによる職業性喘息と診断された。ファルカタは土地を肥沃にする事ができるため注目されており、現在は東南アジア地域に植林されている。地球に優しい木材というイメージが大きいが、木屑を吸入することで上気道症状を訴える者もおり、また、喘息の原因となることが確認された。ファルカタによる職業性喘息の報告は、国内外を含めてこれまでになく貴重な症例と考え、学会報告および論文報告を行った。
原因究明:
Falcata(学名Albizia falcataria)という木材の粉じんが、喘息の原因物質であることが明らかとなった。
診断:
ァルカタ抗原に関するアレルギー検査の結果
1)皮内反応検査:即時型が陽性。遅延型反応はいずれも認められず。
2)沈降抗体反応:陽性。
3)抗原吸入試験:即時型は陽性。遅発型喘息は陰性。
地研の対応:
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターと共同で調査を実施した。
行政の対応:
特になし
地研間の連携:
特になし
国及び国研等との連携:
特になし
事例の教訓・反省:
本症例は、自己診断がきっかけで、取扱い物質である木材の粉じんによる職業性喘息であることが判明した。主治医からは、年齢のせいと言われていたそうであるが、日本は職業性喘息の認識は低く、本来は、職業性喘息であり作業上の取扱い物質が原因であっても、気づかれずに放置されていることも多いと推測された。
ファルカタは土地を肥沃にする事ができるため注目されており、現在は東南アジア地域に植林されている。地球に優しい木材というイメージが大きいが、木屑を吸入することで上気道症状を訴える者もおり、また、喘息の原因となることが確認された。
現在の状況:
ファルカタによる職業性喘息の報告は、これまでになく貴重な症例と考え報告した。
今後の課題:
今後も職業性喘息や、喘息の新規原因物質が発生すると予想されるため、継続的な監視が必要である。また、職業性喘息でその原因が同定された場合、原因の除去および抗原曝露回避が最も有効な治療および予防法であり、職業性喘息自体の認知度を高めること、また職業性喘息の適切な対応法などを周知させることが必要である。
問題点:
日本は職業性喘息の認識は低く、職業性喘息であっても、気づかれずに放置されていることも多いと推測された。
関連資料:
2005年11月の近畿産業衛生学会にて症例報告を行った。
2005年12月に日本産業衛生学会アレルギー・免疫毒性研究会による職業関連アレルギー症例に登録した。
2006年9月に、Journal of Occupational Health 2006;48:392-395にて論文発表を行った