[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:大阪府立公衆衛生研究所
発生地域:兵庫県尼崎市
事例発生日:2005年6月に発覚
事例終息日:2005年12月
発生規模:100名程度
患者被害報告数:100名程度
死亡者数:80名
原因物質:アスベスト
キーワード:アスベスト、石綿管工場、近隣曝露、中皮腫
背景:
2005年6月に、旧石綿管工場の多数の労働者が石綿関連疾患に罹患していること、および工場周辺の住民の中に3名の中皮腫患者がいることが報道発表された。このため、周辺住民から問い合わせが尼崎市、対象企業および市民団体に殺到した。
概要:
同工場が毒性の強い青石綿を使用していた時期に周辺に居住していた方で中皮腫を発症した患者、あるいは家族からの聞き取り調査を実施した。調査項目は職歴、居住歴、病歴などである。その結果、中皮腫による死亡リスクは石綿工場に近いほど高くなる傾向が見られた。特に、工場から300m以内に居住していた女性では、全国平均と比較し54倍(1995~99年死亡)あるいは23倍(2000~05年死亡)のリスクであった。さらに、気象データを用いて、旧工場周辺の気中石綿濃度のシミュレーションを実施した。その結果、濃度分布と患者の分布はよく一致し、推定石綿濃度の増加とともに中皮腫死亡率は直線的に上昇した。これらの結果より、中皮腫の発症に旧工場から飛散した石綿が重要な役割を果たしたことが明らかとなった。
原因究明:
石綿管工場から飛散したアスベストに長期にわたり曝露されたことが原因と考えられる。
診断:
中皮腫死亡率が全国平均よりも有意に高く、旧工場に近いほど高いことから、同工場から飛散したアスベストが原因と考えられる。
地研の対応:
大学の疫学専門家と共同で調査を実施した。
行政の対応:
環境省、兵庫県、尼崎市が疫学調査を実施している。
地研間の連携:
尼崎市公害監視センターより気象データの提供を受けた。
国及び国研等との連携:
国立環境研究所より気象データの提供を受けた。
事例の教訓・反省:
石綿の近隣曝露による中皮腫発症については以前から知見があるが、日本では関心が低く、多数の被害者を出してしまった。
現在の状況:
継続的に調査をしている。
今後の課題:
今後も中皮腫患者が発生すると予想されるため、継続的な監視が必要である。また、肺癌など他の石綿関連疾患についての調査も必要である。
問題点:
問い合わせのあったものを調査対象としているため、全数調査になっていない。
関連資料:
報告書「尼崎市クボタ旧神崎工場周辺に発生した中皮腫の疫学評価」