No.1309 イヌサフランの誤食による食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:横浜市衛生研究所
発生地域:横浜市戸塚区
事例発生日:2005年9月4日
事例終息日:
発生規模:1家族
患者被害報告数:1名
死亡者数:0名
原因物質:コルヒチン
キーワード:コルヒチン、イヌサフラン、球根、食中毒、嘔吐、下痢、急性腎不全、LC/MS

背景:
2005年9月にイヌサフランが原因と考えられる食中毒事例が発生した。

概要:
2005年9月4日、市内戸塚区に住む50歳代男性が、自宅で「イヌサフラン」の球根を「イモ」と誤って摂食し、嘔吐、下痢、急性腎機能障害(急性腎不全)を呈して入院している患者の届出が市内医療機関からあった。購入した「イヌサフラン」の残品をLC/MSで検査したところ、コルヒチンが検出され、原因物質をコルヒチンと推定した。

原因究明:
1 検査方法
尿は固相カートリッジ(OASIS HLB)で精製し、メタノールで溶出したものを、血清は限外ろ過(Ultrafree-MC 5000)したろ液をアセトニトリルで希釈したものを、また、イヌサフランは細切後メタノールで振とう抽出したものを、それぞれフィルターを通過したものを試験溶液にした。試験溶液はLC/MSで、カラムにODSカラムを、移動相にアセトニトリル/50mM酢酸アンモニウム溶液(35:65)を用い、イオン化はESI、POSITIVEモード、フラグメント電圧100Vで測定し、コルヒチンの定性及び定量を行った。
2 検査結果
尿及び血清のコルヒチンは不検出(痕跡)、イヌサフランのコルヒチンは平均310ppm(260及び360ppm)であった。なお、定量限界は0.1ppmであった。

診断:

地研の対応:
2005年9月9日に、市内医療機関から「9月4日にイヌサフラン(球根の1/4)を食べた男性が危篤で入院している。原因としてイヌサフランの成分のコルヒチンが考えられるが、原因物質確定のため、検査が可能か。」との問い合わせがあり、患者の尿、血液について行うこととした。併せて、患者宅にあったイヌサフランの残品についても検査することとした。

行政の対応:
イヌサフランの球根の誤食による食中毒事例をマスコミに公表することにより、市民に危険性の周知等を行った。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
検査の依頼時に医療機関の医師から検査項目の指定があり、円滑に文献検索や準備等を進めることができた。また、北海道衛研年報にHPLCによる分析事例が掲載されており、LC/MS分析の参考となった。
今回、緊急検査のため、標準品として医薬品のコルヒチンを用いて試験法の検討等を行い、標準品入手後に濃度などを確認したが、医薬品と標準品との差異はなかった。

現在の状況:
横浜市衛生研究所健康危機管理対策実施要領により、関連の担当者を招集し、役割分担を行い、円滑に結果を出すことができた。

今後の課題:

問題点:
誤食(9月4日)後、患者の尿や血清などが当所に検査が依頼されるまでに、5日間が経ており、結果としては不検出であった。もう少し、早い時点の検体が入手できれば、検出が可能であったものと考えられた。

関連資料:
1 佐藤正幸ら:北海道衛研所報、53、82-83(2003)
2 佐藤正幸ら:北海道衛研所報、54、107-108(2004)