[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都江戸川区
事例発生日:2006年7月18日
事例終息日:
発生規模:摂食者132名
患者被害報告数:77名
死亡者数:0名
原因物質:ソラニン類
キーワード:ジャガイモ、ソラニン類、小学校、栽培、喉の痛み、吐き気、腹痛
背景:
ジャガイモ中の有毒成分のグリコアルカロイドは芽や皮に多く含まれ、主にソラニン類(α-ソラニンとα-チャコニン)である。このソラニン類が多く含まれた食品を食べると吐き気、腹痛、下痢、頭痛等の中毒症状を引き起こす。成人の経口中毒量は200mg~400mgであり、子供ではその1/10量で発症すると推定される。水に溶けるが加熱調理ではほとんど分解されない。通常のジャガイモには100g中数㎎~数10gのソラニン類が含まれているといわれている。そのため、市販の一個あたり100g前後の大きさのジャガイモでは、ソラニン類による中毒量を摂取するには、成人では数kg食べなければならない。そのため小学校等での中毒事例は多いが、成人での中毒はほとんど起きていない。小さなものは皮をむかないで食べることや過食になることが考えられ、ソラニン類を過剰に摂取する可能性がある。
概要:
7月19日、都内の区教育委員会から保健所に「小学校で6年生が理科の授業で栽培したジャガイモを18日に茹でて喫食したところ、腹痛、吐き気、喉の痛み等の症状を呈した」旨の連絡があった。ジャガイモは13日、14日に採取し、調理室の保管庫で保管後、18日に調理員が調理室において皮付きのまま茹で、児童及び教職員総計132名に提供した。摂
食して、約30分後から77名が中毒症状を呈した。
原因究明:
症状及び摂食状況からジャガイモに含まれるソラニン類等のグリコアルカロイドが考えられた。残品の重量22gの茹でたジャガイモの味覚試験を行なったところ、微にえぐ味が認められた。ソラニン類の分析では、残品の茹でジャガイモ重量12gの試料から1,190μg/g及び20gの試料から205μg/g、また参考品の生ジャガイモ13gの試料から670μg/g及び22gの試料から230μg/g検出された。
診断:
残品の茹でジャガイモは小型であったこと、えぐ味が認められたこと、及びソラニン類が多い試料で約1,200μg/g検出されていることから、本事件はジャガイモ中に含まれていたソラニン類を多量に摂取したために発症した食中毒と判断した。
ソラニン類はジャガイモ重量が20g程度の試料より10g程度の試料で高い値を示した。
ジャガイモによる食中毒は、東京都では平成15年にも小学校で栽培し、それを摂食して発生している。短期の栽培期間や不十分な施肥等によりソラニン類含有量の多い未成熟のジャガイモを摂食していることが考えられた。また,ソラニン類に対する子供の感受性の高さから少ない摂取量でも中毒すると考えられた。
地研の対応:
原因物質の特定に対応した。
行政の対応:
プレス発表を行った。食中毒を防止するため学校に対し、通知文を出し、注意点の周知を行った。福祉保健局のホームページ及び健康安全研究センターの広報等により注意喚起を行った。
地研間の連携:
なし
国及び国研等との連携:
なし
事例の教訓・反省:
現在の状況:
3人体制
今後の課題:
問題点:
関連資料:
東京健安研セ年報、食品衛生学雑誌、衛生試験法・注解、急性中毒・情報ファイル