No.1327 仕出し弁当によるノロウイルス食中毒事例

[ 詳細報告 ]
分野名:ウィルス性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:埼玉県衛生研究所
発生地域:埼玉県、千葉県、東京都
事例発生日:2006年6月13日
事例終息日:2006年6月19日
発生規模:仕出し弁当が配達された134事業所 喫食者数 2,080名
患者被害報告数:710名
死亡者数:0名
原因物質:ノロウイルス
キーワード:食中毒、ノロウイルス、仕出し弁当

背景:
2006年6月16日午後1時頃、KO市内の事業所からKO保健所に「仕出し弁当を食べた従業員複数名が6月15日午後3時頃から吐き気、おう吐、下痢等を呈している」旨の届出があり、同保健所が調査を開始した。また、同日午後3時30分弁当製造会社KO店から「複数の配達先から健康被害が出ている旨の連絡があったので相談したい」との連絡が同保健所にあり、管轄のKA保健所監視担当と共同で弁当製造施設の立ち入り調査を実施した。

概要:
保健所の調査の結果、弁当製造会社KO店の弁当配送先は132事業所で、弁当を喫食した2080名のうち710名が嘔吐、下痢等の食中毒様症状を呈していた。また、発症者の共通食は当該店にて6月13日から6月15日の間に調理された仕出し弁当に限定された。発症者及び調理従事者等の便からノロウイルス遺伝子が検出され、ノロウイルスを原因とする食中毒事件となった。

原因究明:
発症者及び弁当製造施設についての原因究明のための立入調査及び疫学調査は所轄保健所が実施した。保健所の調査の結果、弁当製造会社KO店から配達された132事業所、2080名のうち710名が嘔吐、下痢等の食中毒様症状を呈しており、発症者の共通食は当該営業所にて6月13日から6月15日の間に調理された仕出し弁当に限定された。また、発症者及び調理従事者等の便の食中毒細菌及びノロウイルス遺伝子の検査は衛生研究所において行ったが、検査の結果、発症者15名中15名、調理従事者等31名(調理従事者26名、調理以外の従事者5名)中9名(調理従事者6名、調理以外の従事者3名)からノロウイルス遺伝子が検出された。保健所の調査で、調理従事者には無症状でノロウイルス陽性となった者が複数名おり、これらの調理従事者の内に上記期間中にウイルスを排出していたものがあったと考えられた。また、施設内のトイレの手洗いは破損しており使用できない状態であったことから、用便後の手洗いは調理場内で行っていたか、または全くしていなかった可能性があった。これらのことにより無症状感染者が手指等を介して複数の食品を汚染し、6月14日あるいは14,15日両日の昼間に提供された弁当を原因として6月15~17日に多数の発症者を出したものと推察された。

診断:
ノロウイルス遺伝子検査はRT-リアルタイムPCR法(ABI PRISM 7700 Sequence Detection system)により実施し、ノロウイルス遺伝子検出例は全例G IIであった。さらに、発症者15件、調理従事者等9件についてカプシド領域のRT-PCR法及びシークエンスを実施したところ、発症者15件と調理従事者等8件はgenotype 4で、1件がgenotype 7であった。Genotype 7であった1名は弁当の配送のみの担当者であった。

地研の対応:
6月18日、発症者10名の検体(便)及びふきとり10検体が所轄3保健所から衛生研究所に搬入された。発症者便については食中毒細菌8項目(赤痢、サルモネラ、腸管出血性大腸菌O157,黄色ブドウ球菌(ブ菌)、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、ウエルシュ菌、セレウス菌)及びノロウイルス遺伝子検査を実施した。また、ふきとり検体についてはブ菌のみを実施した。
6月18日当日、発症者10名中10名からノロウイルス遺伝子が検出された。6月20日、細菌検査の結果は、ウエルシュ菌検出1名、ブ菌検出2名であった。ふきとり10検体からのブ菌の検出は無かった。
6月19日から26日の間に、さらに発症者5名及び調理従事者等31名の検体搬入があり、ノロウイルス遺伝子の検査を実施した。検査の結果、発症者5名中5名、調理従事者等31名中9名からノロウイルス遺伝子が検出された。
また、さいたま市から依頼を受けた発症者便(5検体)については電子顕微鏡検査を実施し、1検体からSRSVを検出した。疫学調査報告によると、さいたま市では発症者の30検体中27検体からノロウイルスを検出したとされている。

行政の対応:
6月19日、KO保健所は弁当製造業施設に対し6月19日から6月23日までの5日間の営業停止処分を行った。また、同保健所及びKA保健所監視担当では、営業者及び従業員に対するノロウイルスについての説明及び衛生指導を行い、施設の立入調査時に施設の改善を指示し、その改善状況について後日確認を実施した。

地研間の連携:
特になし

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
仕出し弁当の配達先が広範囲であったことから、関東近県において710名の被害者となる大規模な食中毒事件となり、休日も含めた複数の保健所からの検体搬入となったが、迅速な検査対応ができ原因究明への対応もスムーズに実施できた。

現在の状況:
食中毒事件の対応は保健所からの情報をもとに衛生研究所では2担当(食品媒介感染症とウイルス担当)で検査を行っている。また、リアルタイムPCRの機器は2007年9月に更新し、現在は新機種(ABI7900HTFastリアルタイムPCRシステム)で検査を実施している。

今後の課題:
なし

問題点:

関連資料:
なし