No.1328 ホテル内における集団胃腸炎の発生

[ 詳細報告 ]
分野名:ウィルス性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都区部
事例発生日:2006年12月2日
事例終息日:2006年12月13日
発生規模:
患者被害報告数:436名
死亡者数:0名
原因物質:ノロウイルスGII/4
キーワード:ノロウイルス・胃腸炎

背景:
東京都における2006年12月の感染性胃腸炎患者数は、感染症発生動向調査が開始された1981年7月以来の25年間で最大となった。このような状況下で、施設利用者によって会場内がウイルス汚染され、胃腸炎集団発生の原因となった。

概要:
2006年12月5日、保健所はホテルから12月2、3日の宴会等の利用客で複数グループから嘔吐・下痢症状を呈しているものがいるとの報告を受け、ホテルへの立ち入り調査、厨房等のふきとり調査、残品食材の収去・検査、利用客及び従業員の健康状況調査、ふん便検査、消毒の指導を行った。
(1)発症者は、ホテル利用客364名、従業員72名の計436名であり、検査結果はホテル利用者の発症者のうち、92名中71名陽性、従業員発症者のうち、38名中5名陽性であった。
(2)疫学調査からは食中毒とは断定できなかった。1)宴会食や厨房従業員からはノロウイルスは検出されていない。2)宴会食以外のホテルで調理した食事を食べた利用客からも発症者があり、発症者全員の共通食がない。3)ホテルの利用客が嘔吐し、介助したホテル従業員からノロウイルスが検出された。

原因究明:
不明

診断:
厚労省通知法(平成15年11月5日付食安監発第1105001号)のリアルタイムPCR法により検査を実施した。

地研の対応:
ホテル利用客(発症者)62件中44件ノロウイルス陽性、ホテル従業員98件中15件ノロウイルス陽性(発症者とはかぎらない。複数回・従業員の検便を含む)、検食8件全て陰性であった。COG2F/G2SKR領域のPCR産物について塩基配列を決定し、系統樹解析をしたところDen Haag(ヨーロッパ2006b)株に類似していた。

行政の対応:
ホテル館内の清掃、消毒の徹底と感染性胃腸炎防止対策、従業員の手洗い・うがいの徹底等の衛生管理指導

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
なし

事例の教訓・反省:
ホテル従業員は数百名に達し、利用者も数千名/日に達する施設の事例を調査する場合、迅速かつ大量検査が実施できる体制が必須であった。今後、充実させていく必要がある。

現在の状況:
ノロウイルス検査:リアルタイムPCR法、遺伝子解析:ノロウイルスpolおよびCap領域の塩基配列決定

今後の課題:
施設が大規模になると、利用者は全国に拡大する。検査材料等の送付など、地研間の協力が重要になる。

問題点:
地研間の協力の推進に伴って、感染症法の改正による病原体管理・輸送に関する対応が必要になる。

関連資料:
IASR28巻、p84、2007年3月号