[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都
事例発生日:2006年4月5日
事例終息日:2006年4月6日
発生規模:喫食者782名,患者94名
患者被害報告数:患者94名
死亡者数:0名
原因物質:ウエルシュ菌 血清型TW1 および TW24
キーワード:TW1型,TW24型,ウエルシュ菌,カナマイシン感受性,給食
背景:
ウエルシュ菌は通常カナマイシンに耐性のため,食中毒発生時の検査においては,ウエルシュ菌の分離は,カナマイシン含有の分離培地を用いて行われる.本事例は通常用いられている培地では検出できないカナマイシン感受性ウエルシュ菌が原因であった.
概要:
集団給食施設において,昼食に提供された給食を喫食した782名中94名が,下痢,腹痛等の症状を呈した.患者ふん便から高率にウエルシュ菌血清型TW1およびTW24(共にエンテロトキシン産生性)が検出された.本菌はカナマイシンに感受性を示すウエルシュ菌であった.
原因究明:
疫学的調査結果から4月5日の昼食に提供された給食が原因とされたが,メニューの中から食品の特定には至らなかった.
診断:
患者ふん便60件中31件(51.7%)からエンテロトキシン産生性ウエルシュ菌TW1を,26件(43.3%)からTW24を検出した.その内4件からは両血清型菌が検出された.
地研の対応:
患者ふん便,従業員ふん便等から食中毒起因菌の検査を行い,カナマイシン感受性のウエルシュ菌(エンテロトキシン産生性)2血清型菌を分離した.
行政の対応:
原因施設に対し営業停止(6日間)及び取扱改善命令の処分が行われた.
地研間の連携:
特になし
国及び国研等との連携:
特になし
事例の教訓・反省:
食中毒の発生状況からウエルシュ菌が疑われたが,原因菌が検出されない場合,カナマイシン感受性菌のような非定型的性状を示す菌も念頭に置いて検査する必要がある.
現在の状況:
原因菌が検出されない場合,病原因子であるエンテロトキシンを指標に検査を進めている。
今後の課題:
非定型的性状を示す菌の検査法
問題点:
本事例は,常在菌と推定される典型的なウエルシュ菌が多く検出され,その中に非定型的な原因菌が隠れていた事例で,原因菌の分離は非常に困難であり労力が必要であった.このような菌が原因の場合の検査方法および検査体制,また,検査に通常よりも時間を要することから行政に対する説明が必要なことなどの問題点があげられる.
関連資料:
準備中