No.1341 3施設へ拡大した腸管出血性大腸菌O111による集団発生事例

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性感染症
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:大分県衛生環境研究センター
発生地域:大分県
事例発生日:2007年5月
事例終息日:2007年6月
発生規模:検便対象者830名
患者被害報告数:1名(菌検出者)
死亡者数:0名
原因物質:HEC O111:HNM (VT1&2)
キーワード:腸管出血性大腸菌、O111、集団発生、PFGE

背景:

概要:
2007年5月、大分県内の幼稚園でEHEC O111:HNM (VT1&2)による集団感染が発生した。園児の複数家族からも菌が検出され、感染者には保育園児と小学生がいたので、小学校の全員検便を含め830名の検便を実施した。最終的には、3施設の園児・学童23名とその家族等8名の合計31名から菌が検出された。施設別の検出率は幼稚園18%、保育園2.8%、小学校1.5%の順に低くなっていたが、検出者中の有症率は保育園が最も高かった。分離菌株のPFGEパターンはいずれもよく一致しており、同一菌株由来と推察された。初発を含め、患者が多発した幼稚園では給食等を供していなかった。

原因究明:
感染源は特定できなかったが、まず幼稚園で園児同士の直接的な接触を通じて感染が拡がり、感染園児から各家庭へ、感染家庭から保育園、小学校へ感染拡大したものと推察された。小学校等の感染者は、同一クラスや交流が頻繁な学童間に限定されており、学校や園のトイレ等を介した感染ではなく、幼稚園同様に感染者との直接的な接触を通して二次感染したと考えられた。

診断:

地研の対応:
糞便835件、ふき取り30件を検査した。糞便検体は、CT-SorMAC寒天培地、クロモアガーO157培地、DHL寒天培地で分離培養し、TSB培地による増菌培養を行った。DHL寒天培地からのSweep法、又はTSB増菌液を用いて、PCR法によりVT遺伝子の検索を行った。ふき取り検体はTSB増菌培養後、一部はPCR法でVT遺伝子を検索するとともに、一部は免疫磁気ビーズ法で集菌し、TSB増菌培養後のPCR検索を行った。糞便から分離同定したEHEC O111株は、PFGE法による遺伝子解析(Xba I)に供した。

行政の対応:
幼稚園での集団発生が明らかとなった時点で、県は2006年度に新設した保健所緊急支援チームの派遣を行った。その後、他の2施設への感染拡大が判明し、県庁内に感染症対策本部が設置され、小学校関係者500名以上の全員検便が決定された。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:
O111やO26では、O157と比べて長期間排菌する傾向や除菌の困難な事例が報告されている。本件でも、患児の一人が2度にわたって菌の陰性確認後に再発・排菌を繰り返し、終息発表が遅延した。

問題点:

関連資料: