No.1342 キャンプ場の湧水を原因とした下痢原性大腸菌による食中毒事例

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:大分県衛生環境研究センター
発生地域:福岡県福岡市、大分県K町
事例発生日:2005年7月
事例終息日:
発生規模:409名(喫食者数)
患者被害報告数:76名
死亡者数:0名
原因物質:原大腸菌O168:HNM(eaeA保有)
キーワード:食中毒、下痢原性大腸菌、キャンプ場、湧水、eaeA

背景:

概要:
2005年7月18日~20日に大分県K町でのキャンプに参加した福岡市内の高校生393名と教職員16名のうち、生徒174名と教職員2名が7月19日~23日にかけて水様性下痢、腹痛、嘔吐、発熱(36.5~39.5℃)などの食中毒様症状を呈した。当初はキャンプ場の食事が原因と思われたが、疫学調査の結果、患者の発症時間が大きくばらついていたため、水系感染が疑われた。

原因究明:
下痢起因菌検査の結果、患者便からOUT:H-およびO168:H-の付着因子としてeaeA遺伝子のみを保有するβ‐glucuronidase陰性の非定型的大腸菌が分離されたことから、本事例は下痢原性大腸菌による食中毒と判明した。また、湧き水から、OUT:HNT、O119:HNTおよびO168:H-の付着因子としてeaeA遺伝子のみを保有する大腸菌が検出され、O168:H-については患者分離株と生化学的性状が共通していることから、本事例の感染源はキャンプ場の湧き水であると判断された。
下痢原性大腸菌による食中毒は水系感染が多いといわれるが、原因が明確に特定される事例は珍しい。事件発生後の保健所調査によると、当該キャンプ場に配水された湧き水からは残留塩素が検出されず、水質管理が適正でなかったことが判明した。一方、生徒らは、配水された湧き水は飲用すべきでないことを知ってはいたが、湧き水の配水箇所には飲用不可の標識がなかったことから、安易に飲用していたようであった。本事例は、湧き水の不適切な管理、配水箇所における飲用不可の標識の不備、さらに生徒らの誤った自己判断の三つの要因が重なって発生したものである。

診断:

地研の対応:
大分県衛生環境研究センターで湧き水5検体(水源、分水槽、キャンプ場内タンク、トイレ横およびフロ場横の洗い場で採取)、福岡市保健環境研究所で患者便20検体について下痢起因菌検索を行った。大分県衛生環境研究センターおよび福岡市保健環境研究所で分離された大腸菌については、血清型、病原因子(VT遺伝子、LT遺伝子、ST遺伝子、invE遺伝子、ipaH遺伝子、eaeA遺伝子、bfpA遺伝子、aggR遺伝子およびastA遺伝子)およびPFGE解析を行った。

行政の対応:

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料:
・馬場愛,江渕寿美,瓜生佳世,樋脇弘,緒方喜久代,鷲見悦子,長谷川昭生,内山静夫:キャンプ場の湧水を原因とした下痢原性大腸菌による食中毒事例.病原微生物検出情報,26,275-276(2005).
・平成18年9月6日、日本大学理工学部駿河台校で開催された「第9回日本水環境学会シンポジウム(水中の健康関連微生物研究委員会シンポジウム)」で発表